がんの増殖に関与する核転写因子をより効率的に活性化
東京工業大学は11月20日、ナノサイズの分子のカゴで一酸化炭素(CO)を細胞内に送りこみ、がんの原因物質の活性を制御することに成功したと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究結果は、同大大学院生命理工学研究科の上野隆史教授と藤田健太大学院生らによるもの。米科学誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン版に10月28日付で公開されている。
研究チームは、生体中で鉄を貯蔵するカゴ状タンパク質であるフェチリンに着目。直径12nmのカゴ内部にCO輸送化合物として使われているルテニウムカルボニル錯体を集積し、生きたヒト胎児腎臓細胞へ導入することで、細胞内にCOを放出。がんの増殖に関与する核転写因子をより効率的に活性化させることに成功した。
テーラーメイド型医療の実現に期待
さらに遺伝子工学的に改変を加えることによって、ルテニウムカルボニル錯体の結合数を増加させることにも成功。試験管内での実験ではルテニウムカルボニル錯体のみの場合と比べて、CO放出が約18倍ゆっくりと行われ、遺伝子工学的改変を加えた複合体では、CO放出量が約2倍となっていることが示されたという。
この研究成果は、医薬品開発に従来と異なる概念を提供する可能性を有しているという。具体的には、いまだに不明な点が多いCOの細胞内の機能解明、たんぱく質工学を利用した新しい薬物輸送法の確立、がんなどの重篤疾患を標的とした医薬品開発に貢献する可能性があり、テーラーメイド型医療の実現につながると期待される。
▼外部リンク
・東京工業大学 プレスリリース