治療の対象となる患者はまだ多い
世界で1.3~1.7億人ものキャリアがいるとされているHCV。その治療の現状について、最前線に立つ研究者・医師が講演するアッヴィ合同会社による「C型肝炎プレスセミナー」が東京・丸の内で開催された。
広島大学大学院 医歯薬保険学研究員
疫学・疾病制御学 田中純子教授
「疫学的視点からみた肝炎ウイルス感染の現状と課題」について講演した、厚労省「急性肝炎も含むウイルス感染状況・長期経過と治療導入対策に関する研究」班で、広島大学大学院の田中純子教授は、「無症候性キャリアから慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと病態が変化する肝炎は、血液検査で調べないとキャリアかどうかが分からないうえ、自覚症状がほとんどない期間が長く、病態別のキャリア数の全体把握は困難です」と肝炎検査の重要性を強調。
国が2000年代より無料検診の導入など積極的な取り組みを実施したことで「感染に気付いていないキャリアは大きく減少しました。しかし、まだまだ治療の対象となる患者さんが国内に大勢いらっしゃいます」と田中教授。
肝がんになりやすいグループであるかどうかを確認して確実に予防するために、「少なくとも一度は検査を受けること」「感染がわかったら、自覚症状がなくても専門医を受診すること」「適切な時期に適切な治療が受けられるよう、継続的に医療機関を受診すること」が重要である、と語った。
C型肝炎は「内服薬のみでほぼ全症例が治癒する時代に」
続いて、「C型肝炎治療の進歩」について講演した、虎の門病院肝臓センターの熊田博光先生は、日本人のC型肝炎患者の現状と特徴として、(1)高齢者の患者が多い、(2)副作用に敏感、(3)肝がんの発生頻度が高齢者のために多い、を挙げ、今回新たに登場したインターフェロン・フリーの経口剤治療が重要である、と語った。「複数の製薬メーカーがこうしたインターフェロン・フリーの開発を進めており、C型肝炎は内服薬のみでほぼ全症例が治癒する時代が到来するでしょう」(熊田先生)
「C型肝炎患者にとって、就労は大きな問題です」と語るのはHCV感染者の就労状況改善に取り組む、はばたき福祉事業団事務局長の柿沼章子氏。一定数の患者が、肝炎が理由で転職や失業があったことを伝え、「職場の心配事は患者の心配事。患者が望むのは職場の理解と配慮です」と提言した。(QLifePro編集部)
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・アッヴィ合同会社