■私立薬大協中心に準備進む
日本私立薬科大学協会を中心に「日本薬学教育学会」設立に向けた準備が進んでいる。12月初旬の全国薬科大学長・学部長会議総会で議題に挙げ、同学会設立準備委員会(委員長:笹津備規東京薬科大学学長)の設立の了承を得る方針だ。これまで、新たな薬学教育体制の構築と成果に関する検証は、様々な学会等の学術集会・雑誌等で分散し公表されている。しかし、他の医療分野では日本医学教育学会を筆頭に歯科、看護等、各分野ごとに教育に関する研究・発展を目的とした学術活動が展開されている。「薬学教育」分野でも関係者が一堂に会する学会を設立し、サイエンスとしての「薬学教育学」の確立を目指す。
薬学教育制度の改革は、2004年の学校教育法改正を経て、06年度からの薬学教育6年制がスタート、09年度に薬学共用試験、10年度に長期実務実習、13年度に薬学教育第三者評価が始まるなど、国会での付帯決議を達成してきた。また12年3月には第1期生が卒業、13年度には薬学教育モデル・コアカリキュラムも改訂され、時代の変遷に応じた薬学教育体制の再構築が進められようとしている。
この間、薬学教育の改善や充実に向けた取り組み・成果は、薬学全体としての検証という面では、十分とは言えない。また、日本学術会議、日本薬学会等の各種関連学会や職能団体等の学術大会等と提言、発表等の発信は分散され、薬学教育全体を代表するような統一的取り組みが求められていた。
一方、他の医療関連分野では既に日本医学教育学会(1969年設立)をはじめとして、日本歯科医学教育学会(82年)、日本看護学教育学会(91年)、さらに日本保健医療福祉連携教育学会(08年)などが設立され、各分野ごとにその発展に向け、教育に関する研究、検証等を進めている状況がある。
また、各薬科大学単位の取り組みとしては、基礎から実務家教員を擁する教育研究センターなどが設置され、関わる教員は既に500人にも達し、学会設立に対する要望も挙がっている。このような一連の流れを踏まえて、まず私立薬大協を中心に学会設立準備委員会を設置することになった。
当面の課題は、18年度から改訂コアカリに準拠した新カリキュラムが各大学で導入され、4年制教育課程では参照基準が提案されている。
これら教育改善・充実に向けた取り組みの有効性を確認するためには、科学的検証が必要。また、改訂コアカリに基づき各大学で創造的取り組みを推進するためには、教育学に関する科学的検証も必要となる。直面する課題を含め、これまで手薄だった「薬学教育」を焦点に、最新知見・情報の共有機会および発信媒体の確立を目指す。
準備委員会委員長の笹津氏は、薬学教育の改善・充実に向けた取り組みに関する発表が分散されていることや、他の医療人教育分野では既に教育学会が設立されていることを強調し、「薬学教育に関しても、教育に関する研究活動を活性化し、サイエンスとしての『薬学教育学』を確立するため、学会設立が必要」と本紙に語った。さらに「大学教員、医療従事者、薬業関係者など全ての薬学関係者の協力をいただき、2年以内に『日本薬学教育学会』を設立し、薬学教育に関与する全ての関係者に学会発表と論文発表の場を提供する」とした。
また、薬学教育評価機構理事長の井上圭三氏(帝京大学副学長)は、「医学教育学会では、皆で検討し『医学教育分野別評価基準』を作成している。われわれの薬学教育評価機構も、こういう学会の場で考えてもらえば非常に助かる。また、評価機構での成果もこのような学会の場で発表させてもらいたい」と設立に向けた期待を語る。