厚生労働省の研究会は21日、医療等分野の番号制度の活用に向けた考え方を中間的にまとめた。医療等分野では、“見えない番号”でも医療連携等の必要な目的が達成できるとし、「何らかの番号や電磁的な符号を活用した仕組みが必要」と指摘。マイナンバーとの関係では、災害時に被災者の個人情報を把握するため、「何らかの形でマイナンバーとひも付けできる仕組みも検討する必要がある」としたが、一部委員からは、医療の中にマイナンバーが入ることに強い抵抗感が示された。
医療等分野の番号のあり方について、マイナンバーと別の新たな番号を発行、交付する場合、“見える番号”では膨大なコストが懸念されるとし、医療等分野の情報連携には電磁的な符号(見えない番号)でも必要な目的が達成できるとの考えを示した上で、機微性の高い医療分野の個人情報を効率的にひも付けするためには、何らかの番号や電磁的な符号を活用した仕組みが必要と提言した。
番号法との関係では、「マイナンバーを使う範囲は、行政機関や医療保険者に限定されている」としつつ、大規模な災害時に被災者の診療情報等の個人情報を把握するため、マイナンバー活用も想定されるとし、「何らかの形でマイナンバーとのひも付けが可能な仕組みも検討する必要がある」とした。
具体的な利用場面については、地域ごとの医療介護ネットワークの連携推進を挙げ、番号の利用を希望する地域ネットワークに何らかの共通番号を発行し、利用できるような仕組みも検討すべきとした。
健康・医療の研究分野への活用も挙げ、患者同意のもと、番号を医療情報にひも付けることで長期の追跡研究や大規模なデータ分析等、データ収集や突合を効率的に行うことが可能になるほか、大規模情報を活用した医学研究への相乗効果等のメリットを指摘した。
石川広己委員(日本医師会常任理事)は、出生前診断等が進み、人権侵害の可能性が目前に迫っていると警鐘を鳴らし、「医療にマイナンバーが入ってこないことを守ってほしい」とクギを刺した。
一方、森田朗委員(国立社会保障・人口問題研究所所長)は「番号制度をどう設計するか、メリットとデメリットを合わせて評価すべき」とし、「必ずしもマイナンバーを使うべきではないとは思っていない」と述べ、医療分野のマイナンバー活用を容認する姿勢を示した。