根本的治療法が確立されていないCMT病
群馬大学・生体調節研究所・細胞構造分野の佐藤健教授ら研究グループは11月12日、Charcot-Marie-Tooth disease(CMT病)発症の原因となる変異PMP22タンパク質(PMP22)が細胞内に蓄積するメカニズムの一端を解明することに成功したと発表した。
画像はプレスリリースより
遺伝性疾患の神経難病であるCMT病については、これまで複数の原因遺伝子が発見されているものの、根本的治療法は確立されておらず、研究・開発の進展が求められている。通常、野生型PMP22は小胞体で合成後に細胞膜へと輸送され、神経細胞を保護するミエリンの形成に働く。一方、変異PMP22は小胞体に蓄積して細胞毒性を示し、細胞を変性させてしまうことが判明している。
研究グループは、今回この変異PMP22の小胞体における分解に関わる因子として、新たにHrd1とgp78の同定に成功したという。また、変異PMP22の1種であるPMP22(L16P)の小胞体蓄積に関与する因子として、カルネキシンとRer1を発見することにも成功。これらを同時に機能抑制すると、変異PMP22の小胞体蓄積が劇的に緩和され、細胞膜などへの輸送が促されることを確認したとしている。
変異膜タンパク質が小胞体に蓄積する多様な疾患の発症機構解明、治療法開拓に光
Hrd1とgp78は、タンパク質にユビキチンを付加し、分解を促進する因子。この機能を低下させると、野生型でも変異PMP22でも、小胞体におけるタンパク量が顕著に増加したという。
Rer1はゴルジ体タンパク質で、遺伝子ノックダウン法により機能低下させて検証したところ、小胞体に蓄積していたPMP22(L16P)変異体の一部が細胞膜やリソソームへと輸送されるようになったという。
一方、ヒト・カルネキシン遺伝子の機能低下実験では、変異PMP22の小胞体蓄積に違いは確認できなかった。そこで、カルネキシンの機能低下により変異PMP22が小胞体から搬出されても、Rer1によって捕らえられ小胞体へと送り返されているのではとの仮説を立て、Rer1とカルネキシンの機能低下を同時に施した。すると、変異PMP22(L16P)の小胞体蓄積が大きく緩和され、細胞膜などへの輸送が促進されたという。
よって、カルネキシンが小胞体で変異PMP22と結合し小胞体に蓄積させ、Rer1が漏れ出てきた変異PMP22をゴルジ体で認識して小胞体へ送り返すという2段階のプロセスが存在することが分かったとしている。
今回の研究で、これまで不明だったCMT病の発症機構の一端と、新たな創薬ターゲットを見出すことができた。研究グループでは、さらにCMT病のみならず変異タンパク質が小胞体に蓄積する様々な疾患の原因解明や治療薬開発にも寄与する可能性があるとしている。
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・群馬大学 プレスリリース