同院は人口約40万人の茨城県常陸太田・ひたちなか二次医療圏に属し、人口20万人のひたちなか市、東海村地区で災害拠点病院、二次救急病院、第2種感染症病床、地域支援病院等の機能を有する唯一の総合病院として地域医療を担っている。11年3月の東日本大震災時にはルネサスの工場被災、北5km圏内には東海村原子力発電所もあり、災害を想定した避難計画も今年8月に公表されているところ。
同院では地震や火災、あるいはパンデミックなどの災害、事故、事件などが現実になった場合に備えて、企業・組織等が対策を立案し効率・効果的に対応するための継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格であるISO22301の認証を13年に取得、併せて地域で経産省事業として官民協働のBCMSを構築した。
しかし、地域の各医療機関をつなぐIT連携体制の構築が災害に強い仕組みを作る上での課題として残されたことから、同院が地域薬局との連携を皮切りに「ひたちなか健康ネット」の構築を進めている。ひたちなか薬剤師会会員をはじめ個々に契約した保険薬局に対し、処方データや注射データ、検体検査データ、細菌検査データといった無機質な情報が今年9月から提供されている。さらに、地域保険薬局と疑義照会プロトコルを協働で作成、契約を締結したことでさらなる連携が強化されると共に、疑義照会の業務も互いに効率化されているという。11月13日時点で40薬局との契約が結ばれている。
関氏によると「ひたちなか健康ネットのスタートに当たり、地域の薬局から約60人の薬剤師が参加して勉強会を開いた。その後、参加の意思がある薬局個々に病院職員が出向き、操作方法等を説明した上で、一軒一軒契約した」という。
また、契約した薬局が患者情報を引き出す割合については現在、処方箋の10%程度。関氏は「最初から患者全員に同意を取るのではなく、慢性疾患患者を中心に、徐々に検査データを見る機会を作り、最終的にいいものを作っていこうとお願いしている」と、あえてゆっくりと進めている。また、疑義照会プロトコルの作成、10月以降の契約により、「規格等の違いやGE薬から他のGE薬への変更といった問い合わせが減り、非常に便利になった」と成果を語る。