国立大学医学部長会議、国立大学附属病院長会議は12日、都内で合同記者会見し、科学研究費の減少に歯止めをかけるため、基礎研究費の確保を求める提言を発表した。特にマウスや試薬等、経費がかかる医学研究分野は、2012年度に比べて実質10%近いマイナス予算となっていることに懸念を表明。基礎研究費の増額を訴えた。
両会議は、国立大医学部の科研費獲得状況に言及。採択率は30%程度と横ばいが続いているが、申請金額に占める採択金額が12年度の72・36%から14年度は67・13%に5%以上減少している状況を示し、特に新規採択課題への予算額が昨年度比38億円減少していると強調した。
名古屋大学の高橋雅英医学部長は、消費増税による研究材料と光熱費の高騰、円安による輸入試薬や研究材料の高騰等を挙げ、「2年前に比べると実質的に10%近いマイナス予算となっている」と指摘。研究費の節約も限界とし、論文数減少や若手研究者への影響に危惧を示した。
その上で、医療分野の研究開発予算を「日本医療研究開発機構」に一元化する動きに言及。科研費のうち約600億円が新独法に移管されることに対し、「それがどう使われるか危惧している」と懸念を示した。
さらに、日本の科学研究論文数が落ち込み、最近10年間で世界では約5割増加しているものの、国立大学の論文数は減少している。こうした点を捉え、ノーベル物理学賞を受賞した青色発光ダイオードの研究を例に挙げ、「現在、イノベーションを主体とした大型の研究支援が行われている一方で、応用研究の基盤となる基礎研究への研究費が激減し、基礎研究と応用研究のバランスが崩れている」と指摘。「大型の応用研究への集中ではなく、地道な基礎研究にも研究費を措置すべき」と提言した。
国立大医学部長会議が全国33大学104講座に行った調査では、「マウスの購入数が制限を受けており、十分なインビボでの評価系を立ち上げることができず、追加実験を行えない状況がある」等の声が上がっており、科研費減少による研究の質低下への懸念も示された。