1細胞解析度での観察を可能に
理化学研究所と東京大学は11月7日、マウスをまるごと透明化し、1細胞解析度で観察する技術を開発したと発表した。
画像はプレスリリースより
これは、理研生命システム研究センター細胞デザインコアの上田泰己コア長、田井中一貴元研究員(現東京大学 大学院医学系研究科 機能生物学専攻 薬理学講座 システムズ薬理学分野講師)、東京大学 大学院医学系研究科 機能生物学専攻 薬理学講座 システムズ薬理学分野の久保田晋平日本学術振興会特別研究員らの共同研究グループの成果で、米科学雑誌「Cell」11月6日号に掲載された。
理研を中心とした共同研究グループは、これまでにマウスの脳を透明化し1細胞解像度で3次元画像として取得する、全脳イメージング・解析技術「CUBIC」を開発していた。しかし、血液などの生体色素を多く含む心臓や肝臓などの臓器も脱色して全身を透明化するには、生体色素を除去する効果的な手法の開発が必要だったという。
生物学や医学分野への貢献に期待
そこで、CUBICで用いた透明化試薬を調べたところ、試薬に含まれるアミノアルコールが血液中に含まれる生体色素「ヘム」を溶出、組織の脱色をうながすことを発見。さらに、特定の手順を踏むことで、マウスを丸ごと透明化できる新たな手法を開発したという。
透明化試薬を希釈して全身に循環させた後、臓器で10日間、全身で2週間透明化試薬に浸すことで、透明化が可能としている。また、透明化した臓器や個体サンプルを「シート照明型蛍光顕微鏡」で観察すると、体内の解剖学的構造や遺伝子発現などの様子を、1細胞解像度の3次元イメージとして、1時間程度で取得することができたという。
この透明化技術は、個体レベルの生命現象とその動作原理を対象とする「個体レベルのシステム生物学」の実現に近づくもの。全身の細胞の働きを1細胞解像度で網羅的に観察するこの技術は、生物学だけでなく医学分野にも貢献をもたらすと期待されるという。
▼外部リンク
・理化学研究所 プレスリリース