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関節リウマチの進行を抑える受容体を発見-東大

読了時間:約 1分44秒
2014年11月11日 PM05:30

CRTH2への刺激がマクロファージの活性を抑制

東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部は11月4日、関節リウマチを発症させたマウスにおいて、関節の炎症を抑え、症状の進行を抑制するシグナルを発見したと発表した。


画像はプレスリリースより

関節リウマチでは、炎症を起こした関節に浸潤してくるマクロファージが炎症の悪化や持続に強く関与していることが示唆されていたが、これを効率よく抑える方法などはこれまでに見出されていない。

今回、同研究科の村田幸久准教授らの研究グループは、プロスタグランジンD2(PGD2)が結合する受容体CRTH2が欠損したマウスでは、関節リウマチの症状が劇的に悪化すること、またこのCRTH2への刺激がマクロファージの活性を抑え、炎症も抑制する作用をもつことを初めて発見したという。

CRTH2受容体を標的とした新たな治療法の開発に期待

これまでの研究から関節リウマチ発症マウスでは、血清中のPGD2量が正常マウスに比べ、極めて高いことが報告されている。そこで研究グループは、PGD2と結合する受容体の1つであるCRTH2受容体シグナルに着目した。

まず、正常マウスの脚関節周囲に免疫応答を増強する物質であるアジュバントを皮下注射すると、肢組織中のPGD2含有量が増加し、肢の腫大、関節への炎症細胞の浸潤、関節軟骨の破壊などがみられた。またCRTH2遺伝子欠損マウスでは、正常なマウスに比べ、肢の腫れや脚関節への炎症細胞浸潤、関節軟骨の破壊といった症状の悪化が確認されたという。

そこで正常マウスの骨髄をCRTH2遺伝子欠損マウスへ移植して観察したところ、関節炎の症状が緩和し、逆に遺伝子欠損マウスの骨髄を正常マウスへ移植すると、関節炎症状が悪化した。これにより、骨髄から分化する免疫細胞のCRTH2刺激が関節の炎症を抑えることが示された。

またCRTH2の欠損は、炎症を起こした関節に浸潤するマクロファージを増加させることも判明したという。そして、マクロファージの活性化を抑制する、あるいはマクロファージを除去する薬剤を投与すると、CRTH2遺伝子欠損マウスでみられた関節炎症状が改善することも確認された。さらに、CRTH2欠損のマクロファージを追加移入すると、正常マウスでみられる関節炎症状が悪化したという。

このほかCRTH2を欠損させたマクロファージでは、アジュバントの刺激に対し、マクロファージ自身の分化に関与するGM-CSFや、その遊走に関係するCXCR-2などの遺伝子発現量が、正常マウスのマクロファージに比べて高いことも分かったとしている。

今回の研究結果から、CRTH2受容体の刺激がマクロファージの活性や浸潤を抑え、炎症症状を抑制することが判明した。今後、CRTH2受容体を標的とする関節リウマチの新たな治療方法の開発が期待される。

▼外部リンク
東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部 プレスリリース

 

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