異常をきたした細胞へ特異的に作用、細胞死を誘導
英アストラゼネカ社は10月24日、同社が開発中の「Olaparib」について、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、成人BRCA変異陽性(生殖細胞系および/または体細胞)再発プラチナ製剤感受性高悪性度漿液性卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がん患者に対する単剤維持療法で販売を承認するよう推奨する肯定的見解を示したと発表した。
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同剤は、アストラゼネカ社が開発中の経口ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤。DNA修復経路に異常をきたした細胞へ特異的に作用し、細胞死を誘導する。この作用機序により、卵巣がんをはじめ、乳がん、胃がんなどを含む複数のがん腫に対し有効に作用する可能性が示されている。
今後、欧州委員会で審査された後、最終的判断がなされるが、EUにおいてOlaparibがBRCA変異陽性卵巣がんのファースト・イン・クラス治療薬として承認される可能性が高まったといえる。
卵巣がん、乳がん、胃がんに対する第3相臨床試験も実施中
CHMPの肯定的見解は、Olaparibの有効性と安全性を確認する目的で実施された第2相臨床試験「Study19」の結果に基づいている。同試験は、無作為化二重盲検プラセボ比較試験としてデザインされたもので、259例のプラチナ製剤感受性高悪性度漿液性卵巣がん患者を対象とした。
試験の結果、Olaparib単剤療法がプラセボに比べ無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが確認された(PFS中央値11.2か月対4.3か月(PFS HR=0.18; 95% 信頼性区間0.10–0.31; p値<0.0001))。現在までのOlaparibによる維持療法で最も多くみられた有害事象は、全般的に軽度から中等度であり、吐き気、嘔吐、疲労、貧血などが報告されている。
今回のCHMPによる肯定的見解をうけ、承認された場合には、OlaparibはBRCAm再発プラチナ製剤感受性高悪性度漿液性卵巣がん治療薬として、初のPARP阻害剤となる。
なお同剤は、再発あるいは1次療法としてのプラチナ製剤を中心とする化学療法により完全寛解あるいは部分寛解したBRCA変異陽性(BRCAm)卵巣がんの維持療法治療薬として、第3相臨床試験の段階にあるほか、胃がんおよびBECAm乳がんの術後補助療法および転移性BRCAm乳がんを対象とする第3相臨床試験も進行中である。
▼外部リンク
・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース