現行法では、職務発明にかかる特許を受ける権利は、従業者に帰属し、特許権が従業者から企業に承継される際には、従業者は発明に見合う対価を企業から受けることができると規定されている。
ただ、発明の対価の額をめぐって訴訟に発展するケースもあり、経済界などからはイノベーションの障害となる可能性があるとして、制度改正の必要性を指摘する声が上がっていた。
見直し案では、「従業者等に対して、現行の法定対価請求権またはそれと同等の権利を保障する」ことを明確化した上で、職務発明に関する特許を受ける権利について、「従業者帰属」ではなく、はじめから「法人帰属」にするとした。
ただ、▽従業者帰属を希望する法人(大学・研究機関等)の不利益とならないものとする▽職務発明に関する適切な取り決めのない法人に対して特許を受ける権利が自動的に帰属することで、法人に所属する発明者の権利が不当に扱われない――などの点を考慮した柔軟な制度とする方向性も示した。
特許権が企業などに帰属する代わりに、発明にかかわった社員や研究者の処遇が悪化しないよう、業績に見合った金銭的な報酬や昇進などを従業者との間で調整しておくことを企業側に求めるガイドライン(GL)策定の方針も示した。
GLについては、▽研究活動に対するインセンティブは、企業ごとの創意工夫が発揮されるよう、企業の自主性を尊重する▽業種ごとの研究開発の多様な実態、経済社会情勢の変化を踏まえる――といった性格のものを想定しているとした。
発明の対価を含む特許制度をめぐっては、青色発光ダイオードの開発でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏(米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授)が、以前に勤めていた日亜化学工業を訴え、2004年に東京地裁が200億円の支払いを命じる判決を出し、8億円超で和解が成立。その後も多額の報酬を求める訴訟が相次いでいる。