関節リウマチモデルマウスを用いた研究により
京都大学は10月17日、同大再生医科学研究所 生体機能調節学分野の伊藤能永助教と坂口志文客員教授ならびに京大病院リウマチセンターら研究グループが、関節炎の原因となる免疫細胞(T細胞)が認識する自己抗原を同定し、その自己抗原に対する反応性がヒトの関節リウマチ患者の約17%に認められたと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究は関節リウマチモデルマウス(SKGマウス)を用いて行われたもの。米科学誌「Science」に10月17日付で掲載されている。
免疫の司令塔といわれるT細胞は、自己免疫疾患の根本的な原因とされているが、T細胞が認識する抗原を同定することは技術的に難しく、長らく不明とされていた。今回の発見によって、自己抗原が同定されたことは、関節リウマチの新たな治療法や予防法につながる可能性があるとしている。
自己反応性T細胞が認識する「RPL23A」を同定
通常、自己抗原に反応するT細胞は胸腺で除去されるが、自己免疫疾患の患者はこれらの自己反応性T細胞が存在し、自己抗原を認識して活性化することが、病気の発症原因となるとされている。今回の研究ではまず、関節炎を引き起こす自己反応性T細胞を特定するために、関節リウマチを自然に発症するSKGマウスのT細胞からT細胞受容体を単離。そのT細胞受容体1種類だけを表面に出しているT細胞のみを持つマウスを作製し、そのT細胞の病原性の有無を調べた。
この方法で数種のT細胞受容体について調べた結果、特定のT細胞受容体を持つマウスでは、自己免疫性関節炎を自然に起こしたため、その自己反応性T細胞が関節炎の原因となることが判明したという。続いて、このマウスの血液中に産生される自己抗体を利用して、その自己反応性T細胞が認識する自己抗原(RPL23A(60S ribosomal protein L23a)分子)を同定した。
関節リウマチ患者の16.8%に「RPL23A」
さらに、京大病院リウマチセンターに通院中の関節リウマチ患者の血清を調査。374名中64名(16.8%)がこの抗原に対する抗体を持つことを見出したという。また、リウマチ患者の関節液中のT細胞が、RPL23A分子によって免疫反応を引き起こすことも確認された。これらの結果は、ヒト関節リウマチ患者においても、RPL23Aが病気の原因となる自己抗原のひとつとして働くことを示しているという。
今回の研究結果によって、一部の関節リウマチ患者でも、自己抗原が実際に病気にかかわっていることが明らかになった。同研究で確立した方法は、いまだ原因がわかっていない他の自己免疫疾患の原因抗原の同定にも応用可能であるとしている。(QLifePro編集部)
▼外部リンク
・京都大学 ニュースリリース
・Detection of T cell responses to a ubiquitous cellular protein in autoimmune disease