がん化した細胞には取り込まれず、表面に留まる
東京大学は10月3日、タンパク質AIMが肝臓に生じたがん細胞を選択的に除去する働きを持つことを発見したと発表した。これは、同大大学院医学系研究科の宮崎徹教授らの研究グループによる成果で、米科学専門誌「Cell Reports」オンライン版に10月9日付で掲載されている。
画像はプレスリリースより
AIMは、宮崎教授らの研究グループによって発見された血液中に存在するタンパク質で、メタボリックシンドロームのブレーキとして働く物質。通常は脂肪細胞や肝細胞に取り込まれ、細胞中で中性脂肪の蓄積を阻害するが、今回の研究でがん化した細胞には入っていかず、細胞の表面に留まることが明らかになったという。
補体が活性化、肝臓がん発症を抑制
さらに、がん細胞の表面に蓄積したAIMが目印となり、細菌などから最前線で体を守る免疫のひとつである補体が活性化。がん化した肝細胞を攻撃するようになることをマウスにおいて発見した。これにより、がん化した肝細胞のみが選択的に取り除かれ、肝臓がんの発症が抑えられるとしている。
研究グループはAIMを持たないマウスを作製し、このマウスに高カロリー食を食べさせて肝臓に脂肪が蓄積した状態(脂肪肝)にすると、マウスは100%肝臓がんを発症。しかし、このマウスにAIMを注射すると肝臓がんの発症を抑えられることが判明したという。
これらの結果から血液中のAIM値は、肝臓がん発症のリスクを予測する目印となることが示唆された。また、AIMはもとより人体にあるタンパク質であるため、安全性が高いと考えられる。有効な抗がん剤がなく、治療が困難である肝臓がんに対する新たな治療法の開発が期待される。
▼外部リンク
・東京大学 プレスリリース