関係学会や行政、患者団体などから意見聴取も行い、慎重に検討
日本てんかん学会(代表理事:大澤真木子・東京女子医科大学名誉教授)は、このほどてんかんの病名変更に関する是非を学会として新たに検討する方針を固めた。同学会の長期計画委員会(委員長:井上有史・静岡てんかん・神経医療センター院長)で今後2~3年ほどの期間をかけて関係学会や行政、患者団体などから意見聴取も行い、慎重に検討を行う考え。
同学会では過去に会員に対して病名変更に関するアンケートを行ったことがあるが、当時は「病名を変更しただけではてんかんに関する偏見はなくならない」などの理由で、回答した会員の半数以上が病名変更には否定的だった。
病名変更に対して抵抗感がある医師は少なくない
しかし、2011年4月に栃木県鹿沼市で、運転免許交付の欠格事由の対象となるてんかんの病名を未申告のまま免許の取得・更新を続けていた患者がクレーン車を運転中に発作をおこして6人が死傷した事件や、2012年4月にも京都市でてんかんの既往を未申告のまま軽ワゴン車を運転していた患者が運転中に暴走して本人を含む8人が死亡する事故が発生。これを契機に、欠格事由を未申告のまま運転免許を取得・更新した際の罰則を定めた改正道路交通法や、運転に支障のある病気が原因で死傷事故を起こした場合の厳罰化を定めた自動車運転死傷行為処罰法が新設された。これらはてんかんに対する社会的な関心を高める一方、てんかんという病名のみが独り歩きし、患者に関する偏見が助長されているのではとの危惧が患者だけでなく、てんかん診療に携わる医療従事者にも広がっていた。このため、学会としても改めて病名変更の是非を議論の俎上にあげることを決めた。もっとも現在でも専門医の中には病名変更に対して抵抗感がある医師は少なくなく、検討の結果、実際に病名変更に至る可能性は未知数との指摘もある。
海外では既に、名称変更に踏み切った国もある。地方を中心にてんかんに対する偏見が強いといわれる韓国では2009年に、てんかんについてこれまで使用してきた「癇疾」から「脳電症」と名称を変更し、関係学会も公式名称として承認。同国国会で法令用語としても新病名が認められている。(村上和巳)
▼外部リンク
・日本てんかん学会