今春の改定で在宅患者訪問薬剤管理指導料は、高齢者施設など同一施設に居住する患者と個人宅の患者でメリハリのある点数が設定されると共に、「保険薬剤師1人につき1日に5回に限り算定する」という制限が設けられた。
同委員会は、改定された診療報酬への反応や在宅医療の実態を把握するため、緩和医療や在宅医療に高い関心を持つ100病院、125薬局の薬剤師を対象にアンケート調査を実施。同年会のシンポジウム「診療報酬改定から見えた在宅医療の今後」で同委員会の高橋眞生氏(カネマタ薬局)が調査結果を報告した。
在宅医療にかかわった経験がある薬局薬剤師88人の、1日5回の算定制限に対する評価は、過半数の薬剤師がこの制限に賛同しなかった。約33%の薬剤師が「訪問・算定回数の考え方を1週間単位とし、1週間30回までを上限とすべき」と回答したほか、「1日の上限を増やす」「1週間50回までとする」など上限の見直しを求めた薬剤師の割合は合計で約43%に達した。約24%は「上限は必要ない」と回答した。
また、2014年5~6月の2カ月間に医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料、介護保険の居宅療養管理指導料の算定を実施したのは125薬局中73薬局(58%)存在し、その実績を平均すると1薬局当たり1カ月90回の訪問を実施していた。1カ月18日勤務として計算した場合、1日の平均訪問回数は4・75回になった。
高橋氏は、薬の配達だけで終えるのではなく、質が維持された在宅関連業務を行うために「これくらいの回数が自分たちがやる精一杯という見解が出てきているのかなと思う。5回という数字は決しておかしな数字ではない」と述べ、1日5回制限の妥当性を評価した。
その一方で、1日の訪問回数には薬局によってバラツキがあったほか、医療保険について薬剤師1人当たり1日6回以上訪問した日は1カ月平均で4・5日、介護保険では8日に達したことを提示。「薬局に話を聞くと、前日に数人の薬剤師が調剤して薬を全部揃えた上で、翌日の朝から在宅を回って夜中に帰るなど、2~3日間かけてやっているうちの1日を訪問に充てている。1日10時間、12時間平気で仕事をしている薬剤師がこれだけの回数をやっている」と実態を報告。「多い日もあれば少ない日もあって平均で5回になる」とし、1日単位での上限でなく、1日平均での上限設定が望ましいとした。
現在、介護保険の居宅療養管理指導料には1日5回の算定制限は設けられていない。在宅患者訪問薬剤管理指導料に比べ、居宅療養管理指導料の算定件数の方が圧倒的に多いだけに今後、15年度の介護保険改定で医療保険と同様の制限が設けられると、在宅医療に取り組む薬局に大きな影響がある。
今回の調査結果をもとに同委員会は「介護保険においても回数制限が設けられた場合、現状で提供しているサービスが提供できなくなる」と提言。
介護保険や医療保険の改定において「算定回数の上限設定について、平均にして1日5回算定できるようにするなど、より慎重な対応が望まれる」と求めている。