医療機関でCRCとして活動する入潮佳子氏(市立池田病院臨床研究管理部)は、MRの営業活動が絡んで存在する調査など、問題と考えられる事例を挙げ、「本来、患者から同意を取って調査協力を依頼することが大切」と指摘。収集したデータを有効に活用していくため、調査を観察研究の一つとして発展させる方向性を提言した。
山本晴子氏(国立循環器病研究センター先進医療・治験推進部)も、有害事象発生時に調査票にない追加情報を求められたり、同意が得られた対象者に物品、クオカードを配布するなど、調査内容が日常診療の範囲を超えている問題事例を提示。「文書同意が不要のはずなのに要求されている」などと指摘した。
その上で、「現実には、薬事法の範囲を逸脱したPMSが増加しており、同意取得が必要な調査などは、個人情報保護法などの観点からも臨床研究と同じ枠組みと手続きが必要」とした。
一方、山本氏らが製薬企業に行ったアンケートの結果を踏まえ、企業側もPMSを「日常診療下での有効性・安全性を確認するための情報収集」と理解しているものの、社内で異なる見解との整合性に苦慮している実態もあると指摘した。
慶徳一浩氏(日本製薬工業協会PMS部会)は、昨年から提出が義務づけられた「医薬品リスク管理計画」(RMP)が医療現場にほとんど浸透していないことを指摘。医療現場とリスクの考え方にギャップがあるとし、「RMPで設定した重要なリスクを踏まえ、医療従事者と重要なリスク、目的について目線を合わせることが必要」と述べた。
込山則行氏(医薬品医療機器総合機構)は、「検討事項や調査目的をはっきりさせることで、必要な情報が得られる調査票に工夫していくことも大事。そもそも調査が適切な手法かという部分から吟味していい」との考えを示し、さらに私見として「治験も国際共同治験が主流になってきた中で、PMSもグローバルと同じプロトコルで進めていくものがあってもいいのでは」と提案した。
さらに、調査にはCRCなど医療従事者の協力が欠かせないとして、「どういう理由で調査計画が立案されたか、その背景から正確に理解を共有することで調査に積極的に協力してほしい」と期待感を示した。