隣り合う神経軸索がお互いに伸長運動を支える
独立行政法人理化学研究所は9月29日、隣り合う神経軸索がお互いの伸長運動を支えていることを発見し、その分子メカニズムを解明したと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究成果は、同研究所の発生・再生科学総合研究センター・高次構造形成研究グループの竹市雅俊グループディレクター、林周一研究員ら研究チームによるもの。米科学誌「Developmental Cell」オンライン版に9月4日付で掲載されている。
Pcdh17によって軸索が集団的に伸長
研究チームは、細胞同士の接着に関わる分子であるカドヘリンスーパーファミリーに属するプロトカドヘリンの機能を以前から調べており、特定の神経細胞における軸索の伸長にプロトカドヘリン10(Pcdh10)が必要であること、培養細胞にPcdh10を導入すると細胞運動が促進されることを明らかにしていた。
今回の研究では、Pcdh10と同じタンパク質グループに属するプロトカドヘリン17(Pcdh17)の機能を調査。その結果、マウスの扁桃体から視床下部方面に伸びる軸索上に存在し、軸索の伸長を制御していることが分かったという。
そこで、作製した遺伝子欠損マウスや神経細胞の蛍光ライブイメージングを用いて調べたところ、Pcdh17は扁桃体から伸びる特定の神経細胞の軸索群において隣り合う軸索の伸長運動を支え、同じ種類の軸索が集団的に伸長する仕組みを作り出していることが明らかになったとしている。
扁桃体は情動に基づく記憶の制御に重要であり、マウスでは嗅覚からの情報をもとに、生殖行動や防御行動を制御することが報告されている。Pcdh17遺伝子を欠損させたマウスでは、扁桃体からの軸索の伸長が阻害されるため、生殖行動などに影響を及ぼす可能性があるという。
さらにPcdh17を含むプロトカドヘリン群は、自閉症や統合失調症、また女性のみに起こる特殊なてんかんの原因遺伝子との報告もあり、今回の研究で得られた知見によって、ヒトの疾患原因について理解が深まることが期待される。
▼外部リンク
・独立行政法人理化学研究所 プレスリリース