初の日本人用量による第3相試験
バイエル薬品株式会社は9月29日、同社の新規経口抗凝固剤「イグザレルト(R)錠(一般名:リバーロキサバン)」について、日本人の深部静脈血栓症(DVT)患者と肺塞栓症(PE)患者のそれぞれを対象とした2つの第3相臨床試験(J-EINSTEIN DVT、J-EINSTEIN PE)の結果を公表した。
この画像はイメージです
イグザレルトは、2012年4月に非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制を適応に発売された選択的直接作用型第Xa因子阻害剤。海外ではすでにDVT・PEの治療及び再発抑制の適応でも承認を受けている。今年8月に改訂された欧州心臓病学会の「急性肺塞栓症の診断とマネジメントに関するガイドライン」においても、同剤などの使用が新たに推奨されている。
J-EINSTEIN DVT試験、J-EINSTEIN PE試験は、日本人のDVT患者60人と、PE患者40人を対象として、国内医療環境下で日本人用量によって実施した、新規経口凝固剤では初のものとなる第3相臨床試験。イグザレルトのみを用いるシングル・ドラッグ・アプローチと、未分画ヘパリン注射とワルファリンの2種を用いる標準療法を比較検討した。
ヘパリンブリッジ不要、外来のみの治療実現にも期待
日本国内における2つの第3相臨床試験結果は、海外で実施されたEINSTEIN DVT試験、EINSTEIN PE試験の結果と一貫性を示し、統合解析では、有効性主要評価項目である症候性VTEに関し、イグザレルトは標準療法と同様の発現頻度となった。
安全性主要評価項目の「重大な出血事象」または「重大ではないが臨床的に問題となる出血事象」でも、標準療法とほぼ同様の発現頻度であることが確認され、この点でも海外第3相臨床試験2つの統合解析と同様の傾向であったという。
日本人のみを対象とした第3相臨床試験でも、シングル・ドラッグ・アプローチによる有効性が確認されたことで、治療の初期段階から効果発現の早い新規経口抗凝固薬が使用でき、従来のヘパリンとワルファリンを一時併用するヘパリンブリッジが不要となる可能性が高まった。実現すれば、入院期間の短縮や外来のみの治療も選択肢となるとみられる。
海外臨床試験では、従来の標準治療と比較し、同程度の有効性を有しながら、重大な出血の発現率が低くリスク低下につながることも報告されており、こうした新たな治療戦略としての観点からも期待が寄せられている。(紫音 裕)
▼外部リンク
・バイエル薬品株式会社 ニュースリリース