厚生労働省の「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」が9月30日に開かれ、オンラインの医療保険資格確認における番号の実現可能性等、想定されるユースケースの案が検討された。マイナンバー(個人番号)、医療分野の見える番号、見えない番号の利用事例がそれぞれ示されたが、情報漏れへの懸念や医師のアクセス範囲等に関して意見が噴出、議論は進展しなかった。
この日の検討会では日本電気から、医療事務における番号の利用例として、オンラインの医療保険資格確認などのユースケースが示された。医療機関、薬局で資格確認と同時に、正しい保険者番号、被保険者記号・番号を医事システムに伝え、入力ミスを解消することなどが狙い。正しい資格情報を確認することで、診療・調剤報酬の請求誤りを解消できる。
実施イメージは、患者が番号を提示し、オンラインで本人確認、番号を入力するか符号を読み取り、資格情報を確認した上で、医師が診療行為をするという流れである。マイナンバーを活用した場合、住民票コード等から「見える」番号を発行した場合、番号制度の情報提供ネットワークとはリンクしない「見えない」番号を発行した場合の想定が示され、どれで保険資格情報を管理するか議論が行われた。
符号で管理する「見えない」番号は、見える番号と比べて不正利用のリスクは小さいとされたが、山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「マイナンバーの不正利用による情報漏れは怖いが、符号の場合は全く見えず、災害時に利用できない危惧がある」と指摘した。
樋口範雄委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、「本人確認ができなかった場合、医療を受けられないことがあり得る。エラー対策を考えるべき」と述べた。大山永昭委員(東京工業大学像情報工学研究所教授)は、「医療連携に利用するに当たって、患者情報に医師がどこまでアクセスできるのか決めておいた方がいいのでは」と問題提起。これに対し、「現行の医療提供体制では、患者情報の遮断は現実的でない」「レントゲンとレセプトの再チェックが必要」などと否定的な意見が出た。