再発又は難治性の多発性骨髄腫を適応に
ノバルティス ファーマ株式会社は9月26日、再発または難治性の多発性骨髄腫を適応症として「パノビノスタット乳酸塩(開発コード:LBH589)」の国内における製造販売承認申請を行ったと発表した。
画像はwikiメディアより引用 Author : Nephron
日本における多発性骨髄腫の推定総患者数は約14,000人、人口10万人あたりの推計年齢調整罹患率が約2人、年間死亡者数が4,066人と報告されている。患者はやや男性に多い傾向があり、診断時年齢の中央値は66歳。40歳未満の発症は非常に稀で、年齢とともに増加する特徴がある。
この多発性骨髄腫の総患者数、推計罹患数、死亡者数は徐々に増加傾向にあるとされ、移植や薬物療法による治療が行われているが、治癒できる治療法はない。また、再発および病勢進行を繰り返す疾患であるため、治療効果向上や既存治療への耐性を克服する新薬開発が待たれている。
第3相臨床試験で無増悪生存期間を有意に延長
パノビノスタットは、クラス1、2、4のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を強力に阻害する経口剤。多発性骨髄腫を含む複数のがんでは、HDACが活性化し、腫瘍の形成や増殖、血管新生などがんを促進するプロセスがみられるが、同剤は、このHDACを阻害することで細胞ストレスを生じさせて細胞死を誘導、抗腫瘍効果を発揮すると考えられている。
再発・難治性多発性骨髄腫患者を対象とする第3相臨床試験で、ボルテゾミブおよびデキサメタゾンの併用療法にパノビノスタットを追加投与した場合では、プラセボを追加投与した場合に比べ、無増悪生存期間を有意に延長することが確認されているという。
現時点でパノビノスタットを承認している国は海外にもないが、米国では今年3月に、EUでは5月に多発性骨髄腫治療薬としての申請がなされている。米国で5月に優先審査品目の指定を受けているほか、日本国内でも9月17日、希少疾病用医薬品の指定を受けている。(紫音 裕)
▼外部リンク
・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース