身体的障害の長期予後リスク増大と脳萎縮率の関連性を確認
スイス・ノバルティス社は9月10日、米国-欧州多発性硬化症治療研究会議で新たなデータを発表し、多発性硬化症(MS)患者に関し、脳萎縮の測定は、臨床的に重要な意義があることを改めて明らかにした。そのデータによると身体的障害の長期予後リスク増大と脳萎縮率の間に関連性が認められたという。
今回の発表では、第3相プラセボ対照試験「FREEDOMS試験」とその継続試験から得られた結果を統合・分析したといい、患者は試験開始時から2年目までの脳容積の平均的変化率によって4つのグループに分けられている。
データ解析の結果、4年目に6か月以上持続する身体的障害が認められた患者の割合は、2年目時点で脳萎縮率が最も低かった患者グループでは15.4%だったが、脳萎縮率が最も高かったグループでは24.2%だったという。
6年間の継続的治療で、脳萎縮率を低く維持
さらに、別の長期追跡試験として実施された「LONGTERMS」の解析では、「ジレニア(R)(一般名:フィンゴリモド)」による6年間の治療を受けた患者の脳萎縮率発症率は、期間中0.33~0.46%と低い値にとどまることが示された。MS患者における標準的な脳萎縮割合は、年間約0.5~1.35%と報告されており、これに比べて有意に低い。また0.33~0.46%という値は、MSに罹患していない人で予測される範囲内にもほぼ収まっている。
MS患者における脳萎縮の進行速度は速く、萎縮した部分は回復しない。脳萎縮はMSの早期段階から認められ、患者の身体的機能および認知機能の低下につながっている。今回、あらためて身体的障害の長期予後と脳萎縮との関連性が示され、さらにジレニア治療でこの脳萎縮率を低いまま持続可能であることが新たに明らかとなったことは、MS治療において重要なポイントといえるだろう。(紫音 裕)
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース