■医療安全学会学術総会で討論
医薬品の安全管理を、急性期病院から在宅につなぐ体制を模索するパネル討論が、22日に都内で開かれた第1回日本医療安全学会学術総会で行われた。2025年に向けた医療の機能分化が進められる中、薬物治療を受けている患者の安全管理をシームレスに行っていく仕組みはないのが現状。パネル討論では、急性期病院、療養病床、在宅医療それぞれの安全管理の取り組みが示され、特に薬剤師が介入するに当たって、退院時に在宅を視野に入れたシンプルな処方を提案できるかがカギになると指摘された。
厚生労働省は医療提供体制の改革に向け、病床機能の分化、地域連携を進める方向へと大きく動き出している。その中で、医薬品の安全管理も、確実に病院から地域へつないでいく仕組みが求められている。
奥貞智氏(神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部)は、急性期病院における事例を紹介した。同院では入院前検査センターを設置し、全ての入院予定患者を対象とした薬剤師外来により、抗血栓薬を中心に常用薬のチェックや、潜在的な高リスク患者のスクリーニングを行っている。
今年6月に入院前検査センターを訪れた患者は953人で、そのうち薬剤師が305人(32・0%)に対応した。中止確認が必要な抗血栓薬、骨粗鬆症治療薬等を処方されている患者は136人で、そのうち41人については医師が確認しておらず、薬剤師や看護師が拾い上げた格好だ。奥氏は、「薬剤師外来による常用薬チェックは、入院後の薬剤管理指導の前倒しとして有効に機能している」とした。
さらに「入院中の医薬品をいかに整理して、転院先にシームレスに薬物療法をつないでいくかが重要」と課題を指摘。「そのために情報共有は不可欠であり、患者さんの状態が良いまま転院してもらえるよう努めていきたい」と語った。
棗則明氏(総泉病院薬剤部)は、療養病床における安全管理の取り組みを示した。同院では薬剤師による検査オーダーを実践し、薬物血中濃度測定やワーファリン投与患者のPT‐INR測定など、薬物療法の評価を行っており、退院時カンファレンスで在宅での薬剤管理や、継続した薬物療法を視野に入れた情報提供の取り組みも紹介した。
一方、孫尚孝氏(ファーマシィ在宅推進部)は、在宅医療に取り組んできた薬局の活動として、厚労省のチーム医療実証事業に参画した経験を踏まえ、退院調整から退院日まで迅速な受入体制を構築でき、満足度調査でも薬剤師の訪問薬剤管理指導、24時間対応等が評価されたと紹介した。
その上で、「カンファレンスによる顔の見える関係づくりが重要」と指摘。「最も安全な処方を提案するため、在宅を見据えたシンプルな処方を考えることが大切」との考えを示した。
討論では各氏から「急性期病院では主治医は他の医師の処方に手をつけたがらない。そこに薬剤師がいかに介入できるかが課題」「療養病床では一人の医師が様々な疾患を診察するので、専門医でない医師に処方提案を説明するのが難しい」などの問題も指摘された。