■指針外の民間事業に懸念か
薬局で可能となった血糖測定等の簡易検査に対し、日本医師会が採血を行う検査に反対を表明したことが新たな波紋を呼んでいる。厚生労働省に届け出た薬局等の検体測定室と、民間業者がドラッグストア等で実施する届け出不要のサービスが混在している実態が背景にある。店舗で生化学検査を実施しないとするサービスは、新たなグレーゾーンとも言え、こうした指針外の血液検査に懸念を示したものと見られている。日医の鈴木邦彦常任理事は、本紙の取材に、薬局での血糖自己測定について「ガイドラインを守って、しっかりやってくれれば問題ない」との認識を示した。検体測定室としての薬局では認めるとの立場だ。今後、薬局では指針外のサービスとの違いを明確にし、改めてガイドライン遵守の姿勢をアピールしていくことが重要になりそうだ。
薬局での血糖自己測定は、厚労省が臨床検査技師法の告示を改正したことで実現。経済産業省と連名で基本的な法令解釈を示したのに続き、衛生検査所の登録が不要な薬局等の施設を「検体測定室」と定義し、具体的な手続きと留意点をガイドラインで示した。こうした規制緩和により、全国の保健所で判断が異なっていたグレーゾーンが解消。薬局が地域の健康に貢献し、本来の機能を発揮できる取り組みとして期待が高まっていた。
ところが、日医が3日の記者会見で、一般用検査薬について、検体採取器具を用いた採血を行う検査に反対する見解を表明した。
薬局やドラッグストアでの血糖自己測定は「利用者に安易な自己判断を求めるもの」と難色を示したことで一気に風向きが変わった。セルフメディケーションにも否定的で、医師が関与すべきとの考えを強調したため、薬局関係者には日医の真意をいぶかる声が広がった。
一方、規制緩和の追い風を受け、三菱ケミカルホールディングスグループの健康ライフコンパスが薬局、ドラッグストア等で血液検査を実施する「じぶんからだクラブ」をはじめ、民間業者のサービスが調剤薬局チェーンや大手スーパー、コンビニエンスストアに拡大している。三菱ケミカルHDグループは、生化学検査は傘下の検査会社で実施するため、ドラッグストア等の店舗は「検体測定室」に該当せず、厚労省への届け出は不要と主張しており、新たなグレーゾーンになっているとの指摘もある。
こうした民間業者のサービスと、検体測定室の届け出を行った薬局での血糖自己測定が混同され、血液を採取するリスクと診断行為に抵触するとの懸念が、日医の反対につながった可能性がある。日本薬剤師会も、商業的な血液検査サービスの拡大に懸念を示しつつ、「薬局での血糖自己測定は、既に認められているもの。一般用検査薬の拡大とは切り離して考えるべき」と反論している。
その点について、記者会見で反対表明した日医は、本紙の取材に「ガイドラインを守って、しっかりやってくれれば問題ない」との認識を示した。検体測定室としての薬局等で血糖自己測定を行うことは認めるとしており、これまでの取り組みにブレーキがかかることはないと見られる。
ただ、今回の反対劇は、改めて薬局での血糖自己測定を再点検する契機になったとも考えられる。日薬も検体測定室の取り組みを支援するため、薬局での血糖自己測定に関する手順書を作る考えを示しており、血糖自己測定を普及させるためには、血液を採取するリスクを認識し、ガイドライン遵守の姿勢をアピールしていくことが重要になりそうだ。