愛媛大病院は電子カルテの更新に伴って昨年7月、A5サイズだった院外処方箋様式を変更。A4用紙に院外処方箋と様々な情報を記載することの検討を開始したが、昨年10月から京都大学医学部附属病院が同様の取り組みを始めたことから、これを参考に院内の合意を取り付け、今年5月7日から検査値表示を開始した。
愛媛大病院教授・薬剤部長の荒木博陽氏は「院内から反対する声はなかった。これはとても大事なことなのでやろうということだった」と振り返る。表示する検査値は、腎機能を示す推算GFRなど京大病院が開示した13項目に、アルブミン値を加えた14項目を設定。過去90日以内に測定された直近の検査値を掲載している。
現在、愛媛大病院の薬剤師はマンパワーの関係から、院外処方箋のチェックを行っていない。副作用の早期発見や腎機能に応じた投与量の適正化などは「薬局薬剤師に協力してもらわないといけないが、今までは情報量が少なかった。出せる情報は出すので、連携して患者さんに不利益のないようにしたい」と荒木氏は語る。
愛媛大病院の院外処方箋発行率は90%以上。立地の関係から、多くは門前の4薬局に集中している。今後、地域の薬剤師を対象に勉強会を開き、検査値の読み解き方を説明する予定だ。
■喘息、がんなどの連携強化
検査値表示に加え、病院と薬局が相互に情報をやりとりできる仕組みも構築した。
「おくすり伝言板」と称して、医師から薬剤師へのコメント欄、薬局薬剤師から医師などへのコメント欄を設置。情報を自由に記載できるようにしたほか、一部の外来患者を対象に情報のやりとりを形式化した。
喘息患者については、この欄を通じて医師が薬局薬剤師にステロイド薬などの吸入指導を依頼。薬局薬剤師は指導後、患者の理解度や手技の可否を記入した吸入指導確認シートを同院薬剤部にFAXで送信する。昨年11月から運用を開始した。
また、経口抗がん剤が処方されたがん患者については、がん種、補助療法かどうか、体表面積、クレアチニンクリアランス、投与スケジュール、併用薬の有無などの情報を病院薬剤師がシールに記載し、コメント欄に貼付する。薬局薬剤師は、下痢、口内炎、悪心、嘔吐など副作用の発現状況をモニタリングし、専用シールの各項目にチェックを入れてコメント欄に貼付。同院薬剤部にFAXで送信する。
FAXを受けた同院薬剤部の医療事務職員は、その情報を電子カルテに入力。病院薬剤師はそれを受けて医師に処方変更などを提案し、医師は次回処方などに反映させている。
門前薬局をかかりつけにし、同意を得たS‐1投与患者を対象に昨年10月から開始。今年5月末からカペシタビン、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブの投与患者も対象にした。
このほか、医療用麻薬を含むオピオイド鎮痛薬が処方された外来患者を対象にした連携を今年6月から開始した。
薬局薬剤師は、痛みの有無や場所、レスキュー使用頻度、悪心、嘔吐、便秘、眠気、QOLなどをモニタリングし、専用シールに記入してコメント欄に貼付。同院薬剤部にFAXで送信する。
院外処方箋用紙を介した連携は、お薬手帳に比べ、薬局薬剤師に向けて確実に情報を提供できることが特徴だ。薬局薬剤師からの返信率は吸入指導で約30%、経口抗がん剤で約20%、オピオイド鎮痛薬で約14%となっている。