リオシグアトによる治療2年間のデータを発表
ドイツのバイエル ヘルスケア社は9月8日、「アデムパス(R)(一般名:リオシグアト)」について、治療を2年以上受けた外科的治療不適応または外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者、肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者で、長期安全性プロファイルと持続的効果を確認したと発表した。
この画像はイメージです
試験は、非盲検下のCHEST-2及びPATENT-2の長期継続投与によるもの。2年目の結果で、第3相臨床試験CHEST-1及びPATENT-1で示された運動耐用能とWHO機能分類の改善を確認した。
CHEST-2、PATENT-2における2年以上の観察期間で、有効性の評価項目と生存及び臨床的悪化の関連をCoxの比例ハザードモデルを用いて解析しており、6分間歩行距離(6MWD)、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド及びWHO機能分類のベースライン値、ベースラインからの変化と、無イベント生存期間との関連性が見出されている。
PAHでもNO非存在下でcGMPの産生低下を克服可能か
CHEST-2の2年目時点では、CTEPH患者において測定された6MWD中央値でCHEST-1のベースライン値から50mの延長がみられたという。WHO機能分類では、97%の患者に改善あるいは安定が示されている。リオシグアト治療を2年受けた患者の生存率は93%だった。
PATENT-2の6MWDにおいては、2年以上のリオシグアト治療を受けたPAH患者はPATENT-1試験のベースライン値に比べて、中央値で47mの改善がみられたという。WHO機能分類は91%のPAH患者で改善あるいは安定となっている。こちらも患者生存率は93%であった。
リオシグアトの忍容性は概ね良好で、安全性プロファイルも良好、最も多く報告された有害事象はめまいだったという。
リオシグアトは、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤。肺高血圧症(PH)の重要な分子メカニズムをターゲットに経口治療薬として開発された。PHの病態では、内皮機能不全、NOの合成障害を伴い、sGCへの刺激が不十分となるが、リオシグアトにより、NO-sGC結合を安定化させ、内因性NOに対するsGCの反応性を高めることができる。またNO刺激がなくとも、異なる結合部位を介してsGCを直接刺激する。こうしてNO-sGC-cGMP経路を回復させ、cGMPの産生増加を促してNOの欠乏を補う。
同剤は、CTEPHに対し臨床的有益性を示す、承認を得た初の治療薬であり、また他のPAH治療薬の、NO非存在下ではcGMP産生が低下するといった課題を克服しうるものと期待されている。(紫音 裕)
▼外部リンク
・バイエル薬品株式会社 ニュースリリース