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北海道名寄市、加藤市長「薬用植物栽培の一大研究拠点に」―基盤研と共同研究を開始

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2014年09月12日 AM09:54

北海道名寄市は、漢方薬原料となる薬用植物の栽培で地域振興を目指している。今年7月には、医薬基盤研究所と共同研究契約を結び、「カノコソウ」などで種苗の育成、大量生産が可能な栽培技術を確立し、薬用植物栽培の一大研究拠点として足場を築く。加藤剛士市長は、本紙のインタビューに応じ、「薬用植物で、企業や研究機関、大学などから“相談される存在”になりたい」と述べ、産地形成だけでなく、薬用植物栽培を行う他地域と情報交換が行える“研究集積地”を実現し、地域活性化を目指す。原料生薬が海外輸入に依存し、将来の漢方薬供給が危機に瀕する中、名寄から技術を発信していく。

名寄市は、米、もち米、カボチャ、アスパラガス、スイートコーンなどの産地として有名。薬用植物についても、1990年以前は一大産地だったが、その後、中国産の台頭や北海道生薬公社の解散などもあり停滞していた。

2010年に市長に就いた加藤氏は、“薬草産地としての復活”を政策の柱に、自らが旗振り役となって、取り組みを進めている。昨年、地元生産者有志により「薬用作物研究会」(会長:東野秀樹氏)が発足し、現在では20人の農家が薬用植物を栽培している。そこに試験圃場を持つ研究拠点の「名寄市農業振興センター」や農業協同組合との連携もできつつある。

そして7月には基盤研と共同研究契約を結んだ。基盤研が主催する「薬用植物フォーラム」を名寄市で初めて開催したところ、約160人が参加する盛況ぶりだったという。名寄市内には、基盤研薬用植物資源研究センター北海道研究部があり、「企業や大学、研究機関が共同で研究できる全国でも数少ない地域」と加藤氏は自負する。

こうした研究基盤を生かし、まずはカノコソウの栽培で実績をつくる方針。既に研究会では昨年から試験栽培を開始し、今年で2年目に突入。病害などは見られておらず、順調に進んでいる。収量拡大に取り組み、来年には初出荷する予定だ。加藤氏は「地についたばかり。試験栽培ではいい結果が出ているが、実生産で成功したい」と意気込む。

薬用植物栽培をめぐっては、農林水産省と厚生労働省がタッグを組み、国内での栽培が加速する明るい兆しが見られているが、数品目については産地が乱立し、競争が過熱しており、単価が下落する懸念もある。加藤氏は、「他の産地が手がけない栽培が難しい品目にチャレンジし、個々の薬用植物に適した種苗育成や栽培技術、収穫機の開発など根元の研究面でリードしていきたい」との独自色を強調。国産生薬のブランド化を目指すと共に、栽培効率化や収量・品質を高める技術を確立し、他地域から企業や人材を呼び込み、情報交換の場として活性化させていきたい考え。

人口は減少傾向で、3万人を切った。だが、薬用植物という新たなカテゴリーに挑戦することで、「息子が帰ってきたときに、ぜひやらせたい」という地元農家の声も出始めた。薬用植物を“新規就農”につなげ、後継者問題の解決策にすると共に、漢方薬原料だけでなく、薬膳や地域特産物を開発し、様々な出口を見据えた6次産業化に取り組む。将来的には、海外に輸出できるだけの産業化を目指す。加藤氏は、「ようやく出発点に立った。挑戦していきたい」と話す。

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