■全世界で情報共有目指す
臨床研究・治験のインフラを全世界で共有し、標準化を目指す米非営利団体の日本支部として、一般社団法人「日本エイカーズ」(ACRESジャパン)が発足する。公正で透明性の高い臨床研究を実施するため、グローバルで技術的な共通インフラを整備し、一定基準を満たした医療機関と医師が参加するネットワークを構築。得られたデータの標準化を進め、臨床研究の計画段階から全過程の「見える化」を目指していく。ACRESが打ち出す国際支部構想の初めてのケースとして、臨床研究への信頼が大きく揺らぐ日本でACRESの活動が本格始動する。
ACRESは、国際航空輸送システムに倣い、外部認証を受けた医療機関、医師のグローバルネットワークを構築し、情報インフラと安全監視体制の共有、標準的な方針と手順によって質の高い臨床研究を目指す米国の非営利団体。役員には、大手製薬企業、アカデミア、世界医師会、システムベンダーや臨床研究データの交換標準「CDISC」、さらに投資団体のメンバーが名を連ねる。
設立の背景には、新薬開発コストの高騰化に歯止めがかからず、開発効率が低下する中、これまで製薬企業が実施してきた治験・臨床研究の仕組みに制度疲労が指摘されていることがある。
一方、アカデミアでの臨床研究が推進される中で、結果的に、非倫理的な臨床研究が行われるようになり、質と公正さの確保に懸念が示されてきた。こうした状況を打破し、社会的な信頼を回復するためには、臨床研究のインフラをグローバルに標準化していく必要があると判断。非営利の活動を目指してACRESが発足した。
ACRESのグローバルネットワークは、透明性と標準化がキーワード。一定基準を満たした実施医療機関、医師が参加し、入力するデータはCDISC標準とする方向で検討が進められている。グローバルで一つのデータベースを構築し、情報を共有したり、標準化されたデータを集めるほか、臨床研究のデータ解析やパフォーマンス評価も実施することにより、全ての医療機関で進行中の臨床研究の見える化を目指す。
こうしたグローバルな活動に、高血圧治療薬「ディオバン」の医師主導臨床研究のデータ改ざん事件をはじめ、臨床研究で不祥事が相次いだ日本も参加していく必要があると判断。今回、ACRESの日本支部として「日本エイカーズ」が発足することになった。一般社団法人として秋口に第1回の理事会を開き、本格的な活動を開始する。
本部と同様に、日本エイカーズに参加する医療機関、医師の基準を定めていく予定で、国内の臨床研究ネットワークが参加することも想定。臨床研究を実施する施設の見える化を進める。さらに、ACRESには電子カルテベンダーの富士通が参画を表明しており、入力データをCDISC標準で吸い上げることにとどまらず、電子カルテから臨床研究に必要なデータを取り込む連携システムも検討していく計画だ。
グローバルネットワークを掲げるACRESの活動は、まだ初期段階にある。現在、製薬企業やITベンダー等の参加パートナーが具体的なネットワーク作りを進めているところで、最終的には、標準化されたグローバルネットワークの統合を目指す。そのために、国際支部構想も動き出しており、まず最初の支部として日本が始動した。今後、欧州、アジアに支部を立ち上げていく計画であり、日本が国際支部のモデルとして注目を集めることになりそうだ。