抗PD-L1抗体「MSB0010718C」の有効性と安全性を検討
Merck Seronoは7月29日、同社が開発中のPD-L1を標的とする完全ヒト型lgG1モノクローナル抗体である「MSB0010718C」について、転移性メルケル細胞がん(mMCC)患者を対象とした国際第2相臨床試験を開始したと発表した。
この試験は、多施設共同単一群非盲検試験としてデザインされているもの。まれで進行の早い皮膚がんである転移性メルケル細胞がんに罹患し、ファーストライン化学療法を経験した患者を対象に、その有効性と安全性を検証することを目的とする。84名の患者を登録する予定で、主要評価項目は全奏効率となっている。
PD-L1/PD-1の経路は、腫瘍が免疫系の攻撃から逃れるための主な機序に関連している。PD-L1分子は、mMCCだけでなくさまざまながん種で高発現していることが知られており、「MSB0010718C」は、PD-1受容体との相互作用を競合的に遮断することで、腫瘍に対するT細胞の免疫応答を回復させることができるとみられている。
有効な治療法のないmMCC患者に光、固形がん治療での臨床試験も進行中
メルケル細胞がん(MCC)の病因としては、免疫機構の関与が示唆され、免疫機能が低下するとリスクが高まると報告されている。またMCCからはメルケル細胞ポリオーマウイルスが検出されており、このウイルスが腫瘍の形成において何らかの役割を果たしていると考えられている。
MCCの発生率は増加しており、患者の予後が不良なため新たな治療法が求められている。「MSB0010718C」は、依然有効な治療法のないmMCC患者にとって、有望な治療選択肢となりうると期待される。
なお「MSB0010718C」については、このほかに固形がんの治療効果を検討する第I相臨床試験も進行中だ。こちらの試験では、590名の患者組み入れが目標で、現時点で422名の登録があるという。試験の拡大コホートでは、現在、去勢抵抗性前立腺がん、大腸がん、胃がん/胃食道がん、メラノーマ、転移性乳がん、非小細胞肺がん、卵巣がんの7種類のがんを対象としている。(紫音 裕)
▼外部リンク
・メルクセローノ株式会社 プレスリリース