NEDOの共同プロジェクト成果から「Elmammo」を製品化
株式会社島津製作所は9月4日、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、2006年度より島津製作所らとともに実施してきたプロジェクトである「分子イメージング機器研究開発プロジェクト/悪性腫瘍等治療支援分子イメージング機器開発プロジェクト/悪性腫瘍等治療支援分子イメージング機器の開発」で得られた成果をもととし、乳房専用PET装置「Elmammo(エルマンモ)」を製品化、8月19日付で薬事承認を取得したと発表した。
画像はプレスリリースより
「Elmammo」は、直径185mmの検出器ホールに乳房を入れるだけで検査できるタイプのPET装置。全身用PET/CT装置と比較し、解像度で約2倍、感度にして約10倍の向上を実現している。これにより、乳房をはさむマンモグラフィや従来の乳房専用PET装置のように被験者に痛みを与えることもなく、全身用装置では難しかった小さな乳がんの診断が可能となる。
高精細な3次元断層画像で診断・治療をサポート
「Elmammo」では、乳房の周りに円周状に近接したかたちで検出器を配置。検出器にはガンマ線に対し高い発光効率をもったLGSOシンチレータを用いた。またガンマ線を受ける検出素子を小さくし、1.44mm×1.44mmという臨床用PET装置として世界最小サイズのシンチレータを採用し、空間分解能1.5mm以下の高解像度を実現した。そのため乳房における薬剤分布を詳細に観察できるという。
検査所要時間は片側5~7分で、痛みがないため被験者は静止し続けやすく、またうつぶせ体位で検査可能となっていることから、呼吸による体動の影響も受けにくい。島津製作所によると、この点でも鮮明な画像を得やすい仕組みとなっているという。
こうした特徴から、高精細な3次元断層画像が取得できる装置となっており、MRIなどの形態画像との対比および融合により、乳がんの解剖学的位置関係をより詳細に観察可能となっている。さらにPET画像と病理データとの比較などでも活用できるとしている。
この「Elmammo」は9月4日より販売を開始し、島津製作所では年間10台以上の販売を目指すという。現在のところ、全身用PET/CTとの同日使用が保険適用条件となっているが、将来的には「Elmammo」単独で乳がん診断に寄与することを目標としている。同社では、患者の精神的体力的な苦痛を軽減し、乳房専用PETで早期の薬剤効果判定を可能とするほか、将来の治療薬および検査薬の開発に寄与し、乳がんの早期診断・治療にも貢献していきたいとしている。 (紫音 裕)