重篤な副作用の事例がさらに増加
日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、6月13日に公表した「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」の改訂版を8月29日に発表した。(前回の記事はこちら)
8月17日の時点での各製剤の副作用報告によれば、予想された副作用である尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹などの重篤な副作用がさらに増加しているとのこと。現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれているものの、多くが当初より懸念された副作用であることから、同委員会は、これらの副作用情報をさらに広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要であるとしている。
具体的なRecommendationの内容は以下の通り。
- インスリンやSU 薬等インスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。インスリンとの併用は治験で安全性が検討されていないことから特に注意が必要である。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。
- 高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヶ月間に65歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。
- 脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。
- 発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。
- 本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、必ず副作用報告を行うこと。
- 尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。
- 原則として、本剤は当面他に2剤程度までの併用が推奨される。
(「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」改訂版より引用)
重篤な副作用の事例と対策も
同Recommendationでは、引き続き、副作用の事例と対策も公表。具体的には、「重症低血糖」「ケトアシドーシス」「脱水・脳梗塞等」「皮膚症状」「尿路・性器感染症」についての事例と対策を公表している。
その1つ、「重症低血糖」では以下のように注意喚起をしている。
114例の低血糖が報告され、うち12例は重症低血糖であった。多数の糖尿病薬を使用している患者に更に追加されている場合が多いが、重症低血糖12例のうち実に9例がインスリン併用例であった。また、SU薬の併用は4例であった。DPP-4阻害薬の重症低血糖の場合にSU薬との併用が多かったことに比し本剤ではインスリンとの併用例が多いという特徴がある。SGLT2阻害薬による糖毒性改善などによりインスリンの効きが急に良くなり低血糖が起こっている可能性がある。このように、インスリン、SU薬又は速効型インスリン分泌促進薬を投与中の患者へのSGLT2阻害薬の追加は重症低血糖を起こすおそれがあり、予めインスリン、SU薬又は速効型インスリン分泌促進剤の減量を検討することが必要である。また、これらの低血糖は、必ずしも高齢者に限らず比較的若年者にも生じていることに注意すべきである。
(「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」改訂版より引用)
▼外部リンク
・日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」
・【速報】日本糖尿病学会がSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationを公表