■教員確保など七つの条件も
審査会は、昨年12月の「東北地方における医学部設置認可に関する基本方針」に掲げた趣旨や、▽東北地方の将来の医療ニーズを踏まえた教育の実施▽引き抜きなどで地域医療に支障を来さない教員医師の確保策▽卒業生が東北地方に残り医師不足解消に寄与する▽将来の医師需給に対応した定員調整の仕組み――の四つの留意点を踏まえ、3者の構想を評価した。
東北薬大は、患者や教職員の確保に有利な仙台市内に附属病院を保有していることや、最大被災地である石巻市に地域医療教育のサテライトを設置し、地域医療や災害医療教育の準備教育から臨床実習に至るカリキュラム内容が充実していることが評価された。
また、▽卒業生を地域に定着させるため、宮城県との連携を含めて最大70人分の地域医療従事を条件とした奨学金の確保▽設置経費を自己資金で確保できる一定のメドがあり、財政面でも安定している▽東北で70年以上の医療教育実績がある――などについても選定に当たっての評価につながった。
医学部新設には、宮城県と脳神経疾患研究所(福島県郡山市)も名乗りを上げていた。
宮城県の構想については、村井嘉浩知事の総合診療医を育成・確保し、地域医療を立て直したいという熱意を感じたという意見があったものの、教育内容や教育体制に具体性が欠けていること、栗原市に設置を予定している附属病院の見通しや、近隣医療機関との役割分担が決まっていないことなどから「準備不足を懸念する意見が多かった」とした。
脳神経疾患研究所は、福島県立医科大学との連携関係が構築されていないことや、宮城県や東北薬大に比べて「財政面で確実性に欠ける」ことなどが指摘された。
審査会では、東北薬大と宮城県のどちらを選定すべきかについて両論があったが、東北薬大と宮城県は連携すべきという点について概ね異論はなかったという。そのため、宮城県が奨学金制度などで東北薬大をバックアップするなど、「十分な連携や支援を期待する」とした。
また、東北大学をはじめとする既存の大学と連携して東北6県全体の医師偏在解消につなげることや、120人とする入学定員の見直しなどを盛り込んだ「七つの条件」を着実に実施することを選定の条件とし、審査会が適切に対応ができていると認めるまでは、設置認可が行われないようにすべきとの考えも示した。
審査会の遠藤久夫座長(学習院大学経済学部)は、運営協議会で構想の実現に向けた協議を行い、「関係者が一つになって復興の趣旨に沿った医学部運営が行われる」ことを求めた。