「エリプス」と「ニュートリノ」を自主回収
セント・ジュード・メディカル株式会社は8月22日、植込み型除細動器「エリプス Limited」、「エリプス」、「ニュートリノ ICD Limited」、「ニュートリノ ICD」において、不具合の報告を海外製造元から受けたことから自主回収を行うと発表した。
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原因と対策は特定されており、発生の可能性は稀とされているが、重篤な健康被害にいたる可能性が完全には否定できないためと、対象患者やフォローアップ方法を告知するために、自主的回収を実施することとしたという。
対象製品では、除細動治療時に高電圧ショックを出力する際、使用されているキャパシタが充電されるが、このキャパシタ内部に損傷が生じた場合、出力までの充電時間が延長される可能性がある。
十分な高電圧ショックが出力されない可能性
キャパシタ内部の損傷は、充電時に3つの事象が重なった場合にのみ発生し、条件が整うことはきわめて稀という。万一、この不具合が発生した場合でも、出力のための充電が行われ、32秒以内に充電が完了した場合は設定出力での高電圧ショックが出力される。また充電時間が32秒に到達した場合、その間に充電された状態で出力されるため、検出された全ての心室頻拍と心室細動に対する除細動治療は行われる。
だが32秒経過時点での充電が不十分な場合、治療に十分な高電圧ショックが出力されない可能性があり、その場合は重篤な健康被害に至る可能性を完全には否定できないという。しかし、製品にはアラート機能が設けられており、充電時間延長時には機器自体が振動して患者に受診を促す仕組みがあり、また4~6か月おきに定期的に行う自動キャパシタメンテナンスの機能が搭載されており、その際に充電時間の延長が確認された場合にも振動が起きる。
さらに遠隔モニタリング装置を使用中の患者の場合は、専用Webサイトの医療機関アカウントへの自動通知もなされる。報告では、治療出力の遅延による重篤な健康被害の推定発生率は0.0032%、不十分な治療による死亡の推定発生率は0.00042%であり、国内での不具合報告は2例となっている。
対象製品の納入先はセント・ジュード・メディカル株式会社がすべて把握しており、現在納入先の医療機関および医療関係者に対して必要な情報提供を行い、未使用製品の引き上げと、対象製品を植え込まれた患者への定期的フォローアップの依頼を進めているほか、不具合の起こる可能性がない改良済み高電圧キャパシタ搭載品の提供を行っている。現時点で、この不具合との直接的因果関係が認められる健康被害は、国内外ともに報告されていないという。
対象製品の販売時期は、平成25年2月から平成26年8月まで。回収対象数は2,011台で、回収対象のシリアル番号は一覧公開されている。(紫音 裕)
▼外部リンク
・セント・ジュード・メディカル株式会社 プレスリリース