「岡山版エッセンシャルOTC」は基本品目47品目、推奨品目47品目で構成されている。厚生労働科学研究事業として日本医療薬学会が取りまとめ、今年1月に公表した「薬局の求められる機能とあるべき姿」や、先行して「エッセンシャルOTC」事業を実施した神奈川県の藤沢市薬剤師会、京都府薬剤師会の取り組みを参考に、具体的な品目を岡山県薬が選定した。
基本品目には、解熱鎮痛剤や総合感冒薬、胃腸薬、止瀉薬、下剤、皮膚用薬、絆創膏など「急性期の来局者の初期対応に必要な最低限のOTC薬を揃えた」と岡山県薬理事の桐野恵美氏は語る。推奨品目には、基本品目を揃えた上でより幅広い対応が可能な品目を選定した。
品目選定に併行して、岡山県医薬品卸業協会を通じて各卸に協力を要請。リストの品目名が掲載された発注書を活用し、エバルス、加宝堂薬品、セイエルの各卸に1個単位で発注できる流通体制を構築した。リスト掲載品目については、注文翌日あるいは数日以内に配送される。リスト外の品目であっても、時間はかかるが、1個単位での注文が可能だ。直販メーカーの製品も2社は対応できる。
広域卸は、配送コストに見合わない少額取引、少量取引を敬遠するため近年、小規模薬局は一般用医薬品を取り扱いづらくなっている。岡山県では、卸の幹部が岡山県薬の要職を務めるなど深い関係を背景に、各卸の協力を得ることができたという。
このほか、▽販売時に確認すべき事項をまとめた販売チェックシートと販売記録を一体化させた用紙▽商品名や希望小売価格、薬効分類などを記載したプライスカード▽販売した薬剤師の氏名や薬局名、連絡先を購入者に伝える販売者情報提供カード▽受診勧奨に活用する患者紹介状――などのツールを作成。ノウハウを持たない薬局でも一般用医薬品の販売にすぐ取り組めるようにした。
今年5月から受注を開始。会員769薬局のうち既に189薬局から発注があった。また、基本品目は総数量1610品目、推奨品目は総数量1141品目の発注があったという。
今後は定期的に研修会を開き、頭痛、湿疹など具体的な症状を例に、患者からどのような情報を収集し、どの一般用医薬品を選定すればいいのかを解説したり、POP作成、陳列のポイント、販売促進のヒントなどを伝えたりする計画だ。
岡山県薬会長の赤澤昌樹氏は「院外処方箋が入場券になっていると、薬局が批判されている。本来の薬局の姿を目指し、昨年6月の会長就任時に、県下の全薬局が一般用医薬品を供給できる体制の構築を目標に掲げた」と話す。
岡山県下の薬局を対象に昨年10月に実施した調査では、29・9%の薬局は第1類を取り扱っておらず、8・4%の薬局は第2類・第3類を取り扱っていなかった。取り扱っている薬局でもその品目数は十分ではなかった。
基本品目を1個ずつ揃えた場合の納入価は約3万円。誰でも気軽に相談できる薬局の機能を認識してもらう広告宣伝費と捉えれば負担にはならないとして、活用を推進する考えだ。