30種のがん約7,000症例をゲノム解析
独立行政法人国立がん研究センターは8月15日、国際共同研究(日本、英国、米国、ドイツ、フランス、スペイン、オーストラリアが参加)で30種類のがんから7,042症例のがんゲノムデータを収集し、約500万個の体細胞突然変異を解析し、発がん要因となる22種類の体細胞変異のパターンを発見したと発表した。
画像はプレスリリースより
がんによる体細胞突然変異の原因には、発がん物質の曝露、DNA修復系の異常などが知られるが、多くのがんで体細胞突然変異の発生とその蓄積過程についての詳細は不明である。
一方で、発がん要因による体細胞突然変異の組み合わせには、4種類の塩基がそれぞれ異なる3種類の塩基に変化する合計12種類がある。がんゲノム解読技術の進歩で、それぞれのがん種で起こる体細胞突然変異パターンやその要因が解析できるようになってきている。
新たながん原因遺伝子も同定
今回発見した22種の体細胞変異パターンには、加齢、喫煙、紫外線など既知の発がん物質の曝露やDNA修復経路異常、DNA異常を誘導する抗がん剤治療と相関するものがあるが、明らかな要因を同定できないものも多いという。多くのがん種で2つ以上のパターンが混在し、肝臓がん・胃がん・子宮がんでは最大6種類のパターンがあり、多様な発がん要因または分子機構が働いている可能性があるとしている。
また、新たな発がん要因にAPOBEC遺伝子群の異常を認めたという。これはDNAの変異導入機能をもつ酵素で、ウイルス感染などの宿主防衛機能として発現を誘導されるが、今研究で体細胞突然変異にも関与していると推測される。
今回の結果から、発がん要因の異なるがんの突然変異パターンの分類が可能になった。これにより、今後は発がん要因の推定が可能になり、がん予防にも貢献すると期待される。(馬野鈴草)
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・独立行政法人国立がん研究センター プレスリリース