森氏は、「日本の産業が世界の中で存在感を示していくためには、医療分野は大事」とした上で、「そのためには、斬新なものを次々と出していく必要があると痛感している」と語った。
ただ、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の安全管理監、厚労省医薬食品局安全対策課長として、医療現場に出てからの医薬品・医療機器を見てきた経験から、「発売してから半年くらいの間が気をつけなければならない時期」とし、「製品の良くない部分は早めに見つけて対処し、効き目をしっかり発揮してもらえるようにすることが患者の期待に応えることになる」との認識を示した。
そのためには、「医療現場で患者が何を思い、医療従事者がどう行動するのか、という医療の現実を考えながら製品開発を行い、現場に出すときにもその点を考慮するという心配りが必要になる」と述べ、安全対策の視点も取り入れながら革新的医薬品・医療機器を生み出す必要性を強調。
その上で、「きめの細かい日本らしい気配りのある製品をしっかり出していくことで、日本ブランドを確立することが自分にとっての夢であり、理想」と語った。
ドラッグ・デバイスラグの解消については、「実質的な意味でのラグは解消されてきている」とし、「逆に日本が先頭を切って革新的な製品を出していくという方向を目指さなければならないし、そういう時期に来ている」と指摘。そのためには、「薬事戦略相談をさらに充実させることが大事なポイントの一つになる」との考えを示した。
また、国内には、患者を対象としたスタディで疾患に対する治療効果をいち早く見極めるための臨床試験が実施できる施設が放射線医学研究所や先端医療振興財団などに限られていることにも言及。「その試験を行ったところが、後の臨床開発の支配権を持ってしまう」との危機感を示し、早期の段階で患者への効果を見極める試験を海外から日本に呼び込むためにも、「手の込んだ臨床試験を行える施設をもう少し整備する必要がある」との認識を示した。
■先駆け制度、「年1つ」趣旨に合わない
世界に先駆けて日本での開発が見込まれる医薬品や医療機器、再生医療等製品を迅速に承認するため、厚労省が導入を検討している「先駆け審査指定制度」については、「指定の考え方を厳しくして、年に1つしか指定されないということになるのは趣旨に合わない。多くの患者さんに希望を持ってもらうために制度が作られたということからすれば、ある程度の数が指定を受けられるようになるべき」との考えを示した。
その上で、「そういう趣旨なんだということを機会あるごとに紹介し、どんどん積極的な提案をしてもらいたい」と述べた。