手足口病・ヘルパンギーナ・無菌性髄膜炎等の患者由来の献体から
国立感染症研究所(NIID)は8月12日、感染症発生動向調査事業による病原体定点から、大阪府立公衆衛生研究所に搬入された手足口病・ヘルパンギーナ・無菌性髄膜炎等の患者由来献体から、比較的高頻度にパレコウイルス(HPeV)を検出した旨の報告内容を速報として公開した。
画像はwikiメディアより引用
報告によると、平成26年度4月から7月24日までに、同研究所には手足口病と診断された患者由来の8検体、ヘルパンギーナ60検体、無菌性髄膜炎23検体、その他エンテロウイルス感染症疑い5検体の計96検体が搬入されたという。
これら全てにエンテロウイルスVP4-2領域を標的としたRT-semi-nested PCRを実施したところ、核酸検査で88症例96検体中52検体49症例からエンテロウイルスが検出された。陰性の38症例44検体にはHPeVに対するRT-real time PCRを実施、HPeVが陽性となった検体ではHPeVの5′UTR領域に対するRT-PCRを行い、増幅産物に対するダイレクトシーケンスで遺伝子型別を実施したという。
HPeV 3型では重症事例や死亡事例報告も
疾患別解析では、手足口病の50%でHPeVが検出された。4症例のうち3例では手足の水疱が不明瞭だったという。1症例からはCA4(Coxsackie virus A 4)が検出された。ヘルパンギーナでは72%でCA2、CA4、CA5等を検出、7%でHPeVが検出された。その他のエンテロウイルス感染症疑いでは、25%でHPeVを検出している。この症例では、生後6日から突然発熱して発症し、全身の発赤がみられ高サイトカイン血症と診断された。
HPeVの遺伝子型解析では、増幅可能だった8検体全てがHPeV3型であり、検出動向を月別にみると、4月から検出され始め、他のエンテロウイルス種と同様6~7月に急増したという。
4月のHPeV検出は、無菌性髄膜炎と診断された生後1か月の患者由来の髄液からで、5月はヘルパンギーナと診断された1歳の患者における咽頭拭い検体からだった。平成24、25年度にエンテロウイルス感染症と診断され、エンテロウイルス陰性であった検体、それぞれ約200検体及び約70検体についてHPeV検索を実施したが、両年度とも患者各1名から検出されたのみであった。
このように今年度は、前年度、前々年度と比べて、エンテロウイルス感染症の疑いがある患者で、HPeVの検出が増加。またHPeVが検出された検体内訳も、咽頭拭い液から8検体、髄液から3検体、糞便から2検体、唾液から1検体と様々な検体から検出されており、患者症状も多様である。NIIDは、HPeV 3型の検出事例では重症事例や死亡事例報告もあることから、HPeV感染症の発生動向に注目するよう注意喚起を行っている。(紫音 裕)
▼外部リンク
・国立感染症研究所 発表資料