文部科学省高等教育局医学教育課の丸岡充薬学教育専門官は各演者の講演を踏まえ、「課題として6年制との距離感、多様性をどう確保するか。また、どちらかというとリーダー的人材育成の役割があり、どう確保するか。一方で医療への貢献ということもある」と参照基準作成の焦点を示すと共に、各大学の積極的な参加と議論に期待を寄せた。
同シンポジウムは、同会議・薬学委員会薬学教育分科会と日本薬学会の共催。主催者側の一人である橋田充氏(薬学委員会委員長、京都大学教授)は、いくつかの領域では、大学の質保証の観点から既に参照基準が作成されている現状を示しつつ、薬学領域においては、6年制のモデルコアカリキュラム改定作業が進められていたことから、検討タイミングを計っていたと経緯を説明し、これから本格的に議論がスタートするとした。
今回、製薬企業、薬害被害者、創薬研究、レギュラトリーサイエンスなど薬学にかかわる多彩な演者が広く薬学教育、さらには4年制で求められる教育への期待などを述べたほか、参照基準そのものについても紹介した。
この中で「大学教育の分野別質保証と参照基準」について講演した広田照幸氏(日本大学文理学部教育学科教授)が、参照基準の位置づけと作成上のポイントなどを紹介した。
いくつかの参照基準の作成過程等を踏まえ「むしろ専門教育のみでは良い教育はできない。大学にとっては細かい方が使いやすいが、逆に規定しすぎてしまう。細かくなりすぎないように、各分野にお願いしている」と、作成上の留意点を示した。
質疑で広田氏は「質保証には二つある。外側から縛る質保証と、内側から改善工夫をしていく質保証とがある。コアカリキュラムというのは外からの縛りで、参照基準の考え方は、むしろ内側で様々な工夫や新しい試みができるようにすること。そうなると研究者・リーダー養成の教育に必要なのは、中から改善・工夫し、学問の面白さを伝える。学生にいろいろな発見をさせる、そういうことができる教育を創製していく。そのためには夢を持たせるような参照基準を作ってもらいたい」とエールを送った。