ヒトゲノムに組み込まれたレトロウィルスが深く関与
京都大学iPS細胞研究所CiRAは8月5日、iPS細胞の初期化および分化において、ヒトゲノムに組み込まれた内在性レトロウィルス(HERV-H)が深く関与していることを明らかにしたと発表した。
画像はプレスリリースより
これは、同研究所の元研究員である大貫茉里氏、同研究所の山中伸弥教授、同研究所初期化機構研究部員の高橋和利講師らの研究グループによる成果。米科学誌「PNAS」オンライン版に掲載されている。
高品質なiPS細胞作製の効率化に期待
研究グループは、初期化因子である遺伝子OCT3/4、SOX2、KLF4による初期化の過程で、分化能が低下している分化抵抗性iPS細胞において特異的に高発現しているHERV-Hの制御配列(LTR7)が一過性に活性化していることを見いだした。また、初期化の早い時期にLTR7の働きを抑えると、iPS細胞の作成効率が著しく低下しすることもわかったという。
さらに、HERV-Hの発現はLTR7の活性化によって上昇し、初期化が完了するとES細胞と同程度まで低下するものの、分化抵抗性iPS細胞においては、LTR7が活性化したままで、LTR7の働きを抑えることによって分化能を取り戻すことがわかったとしている。
今回の研究成果について、プレスリリースでは
細胞の初期化技術に重要なメカニズムの一端を解明したことで、今後、高品質なiPS細胞作製の効率化につながると期待できます。(京都大学iPS細胞研究所CiRA プレスリリースより引用)
と述べられている。(小林 周)
▼外部リンク
・京都大学iPS細胞研究所CiRA プレスリリース