脳卒中などの治療への応用に期待
奈良県立医科大学は8月1日、マウスを使った実験で神経同士のつながりが匂いによって促進される分子メカニズムを解明したと発表した。
画像はプレスリリースより
これは、同大学先端医学研究機構 生命システム医科学分野 脳神経システム医科学の坪井昭夫教授らの研究グループによる成果で、米科学誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載された。
報告によると、匂いの情報処理を行う神経細胞が発達する際、タンパク質「NPAS4(エヌパス4)」が匂いの強さに応じて産生され、スパインの数も調節していることが明らかになったという。脳卒中などにより神経細胞が死滅した際に、その部分に神経細胞を移植することで神経障害を回復させるという治療法への応用が期待されるという。
匂いによってNPAS4の発現量が変化
研究グループは、嗅球の介在ニューロンが匂いの情報の入力を受けて発達する様子に注目。片側の鼻を閉じてニューロンの発達の様子を調べた結果、匂い情報の入力は嗅球介在ニューロンによる正常な神経回路の形成に必要であることを明らかにした。
また、DNAマイクロアレイを用いて探索した結果、DNAに結合する転写因子であるタンパク質NPAS4の神経細胞での発現量が、匂い情報の入力によって変化することがわかったという。
NPAS4遺伝子を過剰に発現させた神経細胞では、他の神経細胞と接続するスパインの数が増加し、NPAS4遺伝子を欠損させた神経細胞では、逆にスパインの数が減少していることも明らかにされた。(小林 周)
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・奈良県立医科大学 プレスリリース