霊長類を用いた定量的研究としては世界初
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は8月1日、記憶シナプスの減少が統合失調症のさまざまな症状を引き起こす仕組みを明らかにしたと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究成果は、同センター神経研究所 微細構造研究部の一戸紀孝部長と佐々木哲也研究員らの研究グループがコモンマーモセットを用いて行った、記憶や感情を担う脳神経細胞の発達過程を調べた結果により明らかにされたもの。
霊長類を使ってのこのような定量的研究は世界初であり、米科学誌「Brain Structure and Function」オンライン版に7月27日付で掲載された。
一定量に保たれるべきシナプスが減少
同研究グループはコモンマーモセットを用いて、記憶や感情に関わる領野(24野・14r野)と俊敏な判断に関わる脳領野(8B/9野)について、発達過程を調べた。
その結果、両領野ともシナプスを乳幼児期には増大させ少年期に入ると減少させたものの、思春期に入ると俊敏な判断に関わる領野では引き続きシナプスを減少させるのに対し、記憶や感情に関わる領野では減少させずに一定量を保ったという。
統合失調症では、記憶や感情に関わる領野のシナプスが減少を続けることがわかっている。このことと今回の研究の結果により、通常は一定量に保たれる記憶や感情に関わるシナプスの減少が統合失調症の発症に関与していると考えられ、シナプス維持に関わる遺伝子の解明が統合失調症治療へつながると期待される。(小林 周)