覚醒や注意による脳の仕組みを解明
独立行政法人理化学研究所は7月23日、覚醒や注意によって感覚が鋭敏になる脳の仕組みを解明したことを発表した。
画像はプレスリリースより
この研究成果は、理研脳科学総合研究センター大脳皮質回路可塑性研究チームの木村塁研究員、サファリ・ミラ・シャハラム研究員、津本忠治チームリーダーらの研究チームによるもので、米科学誌「Journal of Neuroscience」に掲載される。
覚醒している時や何かに注意をはらっている時に、感覚が鋭敏になることは良く知られている。視覚の場合、目から入った視覚情報は脳内で中継され、大脳後頭葉にある視覚野の神経細胞が反応することで認識されると考えられており、どのように見えるかは、視覚野の神経細胞の「視覚刺激に対する反応」によって決まるという。しかし、覚醒や注意により、視覚野の神経細胞の反応がどのように変化するか、その仕組みは解明されていなかった。
アセチルコリン投射系が抑制性神経細胞を活性化
そこで研究チームは、遺伝子改変ラットやマウスの大脳皮質視覚野を用い、麻酔状態から覚醒状態に移行する際の神経細胞反応の変化を調べ、覚醒や注意によって感覚が鋭敏になる仕組みを調べた。
多数の神経細胞の活動を同時に記録可能な2光子励起カルシウムイメージング法を使って、興奮性と抑制性の神経細胞を区別できる遺伝子改変ラットやマウスの大脳皮質視覚野の神経細胞の反応を詳細に調査。その結果、麻酔状態から覚醒状態に移ると抑制性神経細胞の反応が増大し、興奮性神経細胞の活動がより速く減衰することを発見したという。
また、覚醒によるこのような変化は、アセチルコリン投射系が抑制性神経細胞を活性化することによって生じることも明らかにしたとしている。
プレスリリースでは
今回の発見は、覚醒や注意をはらうことによって活性化される「感覚鋭敏化脳回路」とその動作の仕組みを明らかにしたもので、ロボットや、ウェアラブルコンピュータに用いる視覚情報処理のための回路設計などへの応用につながる可能性があります。(独立行政法人理化学研究所 プレスリリースより引用)
と述べられている。(小林 周)
▼外部リンク
・独立行政法人理化学研究所 プレスリリース