セツキシマブ+FOLFIRI併用で、RAS野生型転移性大腸がん患者の全生存期間を優位に延長
メルクセローノ株式会社は7月29日、「大腸がんのさらなる個別化治療に向けてRAS遺伝子の可能性」と題したプレスセミナーを開催した。これはセツキシマブ+FOLFIRI併用で、RAS野生型転移性大腸がん患者の全生存期間を優位に延長するという臨床試験の新たな解析結果を受けたもの。愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部長外来化学療法センター長の室圭氏と医療法人薫風会佐野病院 消化器がんセンター長の小髙雅人氏による講演が行われた。
愛知県がんセンター中央病院
薬物療法部長外来化学療法センター長
室圭氏
RASタンパク質に関連している3つの遺伝子KRAS、NRAS、HRASは細胞増殖におけるシグナル伝達に重要な役割を果たしている。大腸がん治療ではこの3つの遺伝子のうちKRAS遺伝子の異常を検査で行ってきた。この検査で遺伝子に変異がないものを「KRAS遺伝子野生型」といい、日本人の60%がこれにあたる。
KRAS野生型の場合、抗EGFR抗体薬が細胞増殖を促すシグナル伝達を阻害し、がん細胞の増殖も阻害することが可能とされてきた。しかし10%はNRAS遺伝子の変異などを含むため、より精度の高いRAS遺伝子検査が望まれている。
RAS検査がもたらす個別化治療のメリット
医療法人薫風会佐野病院消化器がんセンター長
小髙雅人氏
RAS遺伝子検査の導入が、大腸がんのさらなる「個別化治療」つながると2人の講演者は口を揃えて語る。
「最適な治療戦略が立てられ、より高い治療効果期待できる。自分にあった薬剤治療で患者も安心。効果が期待できない患者に無駄な薬剤投与をしないことで、医療費の削減ができ、無用な副作用を減らすことができる」と室氏は個別化治療によるメリットを提言した。
「RAS野生型に対する抗EGFR抗体薬の有用性が複数の臨床試験で示されている。1日でも早いRAS検査の国内実施が患者のベネフィットにつながる」と小髙氏は語った。(QLifePro編集部)
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・メルクセローノ株式会社ニュースリリース