教育・総合科学学術院/先端生命医科学センターの研究チームの研究により
早稲田大学は7月17日、異性の存在が性ホルモンの分泌を変化させる新しい神経機構、つまり一目惚れの分子メカニズムをウズラを用いた研究で明らかにしたと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究は、同大学教育・総合科学学術院/先端生命医科学センター(TWIns)の筒井和義教授と戸張靖子研究助手らによって行われたもの。
これまでに、社会環境の変化によって、動物の行動や生殖腺からの性ホルモンの分泌が変化することは知られていたが、その違いが脳にどのような変化をもたらし、どのように人間や動物の行動や生理状態を変化させるのかは明らかにされていなかった。
日本ウズラをつかった研究
同研究チームは、日本ウズラの「雄が雌を視覚的に認知すると数秒後には交尾するという瞬時の行動変化を示す」という特徴を利用して、一連の実験を行った。
実験では、「ひとりぼっちの雄」、「透明なプラスチックの壁越しに雄」、「雌とお見合いした雄」の脳で、GnRH(生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン)とGnIH(生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン)の変化を調査。その結果、雌をみた雄の脳でGnIHだけが増加し、「雌とお見合いをした雄」の血中の生殖線刺激ホルモン濃度が下がっていることが分かった。
ノルエピネフリンの分泌でGnIHが増加
GnIHの増加には、神経伝達物質であるノルエピネフリンが関係しており、雄ウズラが雌をみると、GnIHを生産する神経細胞(GnIHニューロン)がある脳の場所で、一時的にノルエピネフリンの放出が増えることが判明した。また、ノルエピネフリンを雄ウズラの脳に投与したところ、GnIHの放出が増え、血中の生殖腺刺激ホルモン濃度が下がったという。
つまり、雄が雌をみることにより、脳内でノルエピネフリンの分泌が急速に高まり、ノルエピネフリンがGnIHニューロンに作用して、GnIHの分泌を増やす。GnIH分泌の増加により、生殖腺刺激ホルモンの分泌が抑えられ、男性ホルモン(テストステロン)の血中濃度が下がる仕組みだ。
今回の実験は鳥類のウズラによるものだが、同研究チームによると、人間や多くの動物にもノルエピネフリンとGnIHは存在しており、ヒトを含めた哺乳類でも同じ仕組みが存在することが推測されるとのことだ。(太田みほ)
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・早稲田大学 プレスリリース