ストレス下に置かれると分泌されるホルモン、コルチゾン。別名、ストレスホルモンとも呼ばれています。このホルモンがあるからこそ、私たちの体はストレスを乗り越えられるのです。
けれども、長期にわたってストレスにさらされ、このホルモンが出続ける状態になることは、私たちの認知機能に悪影響を及ぼすようです。
このストレスホルモンと認知機能の関連性に関して、アメリカで行われたラットを使った実験の結果が報告されました。ストレスホルモンに関連する記憶力の低下は、20か月を過ぎたラットで見られるようになり、これは人間では65歳頃になります。
人間で65歳頃にあたるラットを同じ迷路に繰り返し入れることで、記憶の状態を調べました。この迷路では、正しい道を選ぶと、えさが食べられるようになっています。
すると、ストレスホルモンレベルが高いラットは、2回目以降も正しい道をなかなか見つけられないという結果になりました。ストレスホルモンレベルの低いラットが正しい道を選ぶ確率は80%であったにもかかわらず、ストレスホルモンレベルの高いラットではこの確率はわずか58%だったのです。
さらに、記憶力が低下しているラットの脳では、神経細胞間の情報伝達に関わる、シナプスのサイズが小さく、数も少ないことが分かりました。
ストレスホルモンは、私たちに様々な状況を乗り越える手助けをしてくれますが、長期的に負荷がかかることはやはり脳を疲弊させてしまうと言うことでしょうか。年老いた後の脳の健康も考えて、若い頃から適切なストレス管理を心がける必要がありますね。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
・Adrenocortical Status Predicts the Degree of Age-Related Deficits in Prefrontal Structural Plasticity and Working Memory
・Stress Hormone Linked to Short-Term Memory Loss as We Age