厚労省は、14年度予算に「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点の推進」事業を計上。これを受け、栃木県薬は、将来的な本格導入も視野に入れ、電子お薬手帳の実証事業を実施することを決めた。実証事業は県内の約800薬局のうち、栃木地域を中心とした50薬局を対象とする予定。8月から開始し、来年2月頃には報告書をまとめる。
現在、電子お薬手帳の種類は80種類以上あるといわれており、バーコードによるスマートフォン等への取り込みが主流となっている。栃木県薬は、患者や薬剤師の利便性等を考慮。レセコンに患者の携帯画面のバーコードを読み込ませる1回だけの登録で薬情報がデータセンターに保存されるクラウド型の電子お薬手帳「ポケットファーマシー」の導入を決定した。既に会員向け説明会を開き、約30薬局が参加したという。
ポケットファーマシーは、患者の来局時に1回登録するだけでクラウドサーバに情報が保存され、毎回情報を読み取る等の必要がない。他の電子お薬手帳との互換性もあり、携帯電話、スマートフォン、パソコン等の端末を選ばずにクラウド上の情報をいつでも閲覧できるのが特徴だ。
薬局薬剤師にとっても、2回目の来局時から窓口で電子お薬手帳の作業をせずに済み、調剤録が全てクラウドサーバにバックアップされるため、災害時に処方記録が紛失することがなく、24時間どこからでも患者対応できるメリットがある。
患者は2回目の来局時から電子お薬手帳の対応が不要となる。薬局で処方箋の情報が入力されると、クラウドサーバに保存され、いつでもどこでも随時更新された自分の処方情報をパソコン、スマートフォン等から得ることができる。
ただ、クラウド型のため、初期投資のほかにサーバ利用のランニングコストがかかる。そこで、多機能型のポケットファーマシーについて、電子お薬手帳の機能だけを使用する場合、1カ月1500円の使用料を設定。来年の実証実験後も、継続して利用できるようにしてもらいたい考え。
栃木県薬の大澤光司会長は、「あくまでもお薬手帳は保管するもので、紙の手帳の良い部分も多い。まず紙の手帳と併用して実証事業をやってみて、利用者層を把握したり、薬剤師の感想を集めた上で、継続して電子お薬手帳を使ってもらえるようにしたい」と話す。
その上で、「薬局にとっては、患者さんがお薬手帳を紛失した場合もバックアップされていることは大きなメリット。サーバ利用料についても、電子お薬手帳を導入していることが、親切で安心な薬局だというプラスイメージにつながるならば必要なコストだろう」との認識を示し、「電子お薬手帳の活用は、患者情報の共有という意味では医療安全にもつながる。実証事業を成功させ、電子お薬手帳を使ってみたいという薬局が増えてくるようにしたいと意気込みを語った。
現在、政府ではマイナンバーの医療への活用が議論されているが、ポケットファーマシーは、既に将来的な電子お薬手帳とマイナンバーの連動に対応できるよう設計されているという。栃木県でも、電子お薬手帳の本格導入を見据え、積極的にICTの活用を進めていく考えだ。