厚生労働省は15日、初めて薬事法の指定手続きの特例を適用し、「AB‐CHMINACA」と「5‐Fluoro‐AMB」(いずれも通称)の2種類の化学物質を指定薬物に指定し、同日付で改正省令を公布した。
新たに指定された化学物質は、先月24日に東京・池袋駅近くの歩道に車が突っ込み、8人が死傷した事件で逮捕・送検された男の車から見つかった脱法ドラッグに含まれていた未規制のもの。改正省令は25日に施行され、医療等の用途以外での製造や販売、所持、使用が禁じられる。
薬事法第77条第1項では、緊急を要し、あらかじめ薬事・食品衛生審議会の意見を聴く時間がない場合などに、「特例として厚労相が所定の手続きを経ずに指定薬物を指定できる」と定めている。
通常、指定薬物の指定手続きには、薬事・食品衛生審議会での議論や、一般からの意見公募などを経る必要があり、指定までに数カ月から半年程度かかることが多いが、厚労省は今回、初めて薬事法上の特例措置を適用。事故発生からわずか3週間でのスピード指定となった。今回の指定により、指定薬物は1379物質になった。
脱法ドラッグをめぐっては、池袋での事件後も事件・事故が続出している。田村憲久厚労相は15日の閣議後の記者会見で、「このような案件がここ1~2週間で連日報道されており、被害者の方々が気の毒。迅速に指定して禁じないと社会的に大きな影響が出る」と述べ、指定手続きの特例の対象となる「緊急を要する」ケースに該当すると説明した。
また、「今後も海外情報や国内の販売実態等をしっかり把握しながら、指定薬物の迅速な指定に努めていきたい」とした。なお、2物質の省令名は▽AB‐CHMINACAがN‐(1‐アミノ‐3‐メチル‐1‐オキソブタン‐2‐イル)‐1‐(シクロヘキシルメチル)‐1H‐インダゾール‐3‐カルボキサミド▽5‐Fluoro‐AMBがメチル=2‐[1‐(5‐フルオロペンチル)‐1H‐インダゾール‐3‐カルボキサミド]‐3‐メチルブタノアート――となっている。