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診断確定まで平均10.5年 患者会アンケートからみる強直性脊椎炎の実態

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2014年07月08日 AM10:00

20~30歳代の発症が多いAS

アッヴィ合同会社とエーザイ株式会社は6月26日、プレスセミナー「原因不明の全身疾患 強直性脊椎炎とは」を開催。順天堂大学医学部 膠原病・リウマチ内科の多田久里守助教、同大医学部 整形外科・スポーツ診療科の井上久非常勤講師らが講演した。


順天堂大学医学部 膠原病・リウマチ内科
多田久里守助教

(Ankylosing spondylitis:AS)は、リウマチ性疾患である脊椎関節炎の代表的疾患で、背中や腰、それもお尻のあたりや股、肩の関節などに痛み、腫れ、こわばりがみられ、これらの部位が次第に動かなくなる疾患だ。発症は20~30歳代が多く、初期には特徴的な徴候を示さず、腰痛症や坐骨神経痛と間違われることも少なくないという。

日本人における有病率については、大規模な検討がなされておらず、あいまいなままであるが、0.0065%ほどとする考え方が今のところ一般的であり、非常に稀な疾患といえる。他国での有病率は、ドイツでは0.66%、ノルウェーでは1.1~1.4%とされており、人種、地域によって大きく異なるという特徴を持つ。

同疾患の発病については、HLA-B27というヒト組織適合型抗原の保有率との関連性が考えられている。一方でHLA-B27陽性だとしても発症するとは限らず、その発症率は陽性患者のうち5~20%、HLA-B27の寄与は35~50%といわれている。

「気のせい」と言われた患者も

同セミナーでは、強直性脊椎炎の患者会「日本AS友の会」が行ったアンケート調査結果も公表された。それによると、ASの初発年齢は平均で25.29歳、30歳までに7割が、40歳までに9割が発症している。最初に症状が現れた部位は、股関節部、骨盤、腰部などが多く、平均4.4箇所に認められた。初発症状としては、不定の腰背部・臀部痛、股関節痛が大多数を占め、初期においては再燃・消退を繰り返す。また、30~40%は末梢関節炎で発症したという。


順天堂大学医学部 整形外科・スポーツ診療科
井上 久非常勤講師

特筆すべきは診断までに要した時間である。同アンケートによると、ASと診断されるまでに要した時間は平均10.5年、施設数では4.7施設を受診したという。これは、AS初期においては、他の疾患と似たような症状を示すことが関係している。患者のおよそ9割がASと診断される前に腰痛症/ぎっくり腰、坐骨神経痛、ヘルニアなど他の疾患と診断を受けていたそうだ。激しい痛みと、なんともない時期を繰り返すことから「気のせい」「怠け者」「運動不足」とされたケースもあるという。井上先生によると、AS先進国であり有病率が日本のおよそ100倍のドイツ患者会調査でも診断まで平均7.4年かかっており、ASの早期診断がいかに難しいかうかがい知れる。

世界的に見て日本にはAS患者数が少ないことから一般社会はもとより、医療従事者の間でもASについては、正しい情報が伝わっていないという。そのため、診断が遅れることや、逆に他の疾患をASとする過剰診断・誤診も多い。「医師によりASと診断された後、詳しい治療法などが得られないこともある」と井上先生は語る。また、ASはリウマチ性疾患のグループに属しているが、一部のリウマチ治療薬は効果が無い。それを知らず、効かない薬をずっと飲まされた患者もいるという。

高額な治療費、求められる適用拡大と補助制度の充実

ASにおいて、早期治療開始の重要性は高い。NSAIDsを継続的に服用することにより、骨化の進行が抑制されたという研究結果があり、また、2010年に日本でもASに対し適用となったTNF阻害薬も、若年者で、機能障害が進行していない、炎症反応が上昇している患者において、高い有効性が期待できる。骨化の抑制については、有意差は認められていないが、これは調査期間が短かったことによるものと考えられ、抑制にも期待が持てるという。

しかし、日本では、レントゲン変化が見られているASにのみ、TNF阻害薬が適用となっており、初期においてTNF阻害薬を投薬することは難しい。また、薬価が高く、医療費助成制度を利用したくても「リウマチのように手足が動かないわけではなく、背骨が動かないというのは、なかなか認定されない。特に初期は認定を受けられない」(井上先生)ことから、高額なTNF阻害薬を使用するのをためらう患者もいるようだ。今後、ASに対する医療従事者の理解はもちろんのこと、公的機関の理解も早急に深まることが望まれる。(

▼外部リンク
日本AS友の会 ホームページ

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