■医療者の健康被害を防止
協議会の理事長には、国立がんセンター名誉総長の垣添忠生氏が就任した。副理事長には、薬剤師を代表して名古屋大学大学院医学系研究科医療行政学特任准教授の杉浦伸一氏、看護師を代表して神奈川県立がんセンター看護局長の渡邉眞理氏が就任した。
抗癌剤曝露が医療従事者に健康被害をもたらす危険性は、海外では1970年代から認識され、汚染対策が進められてきた。ただ、わが国では毒性が強いシクロフォスファミド等、アスベストと同等の発癌性物質を病棟で取り扱っているにもかかわらず、曝露対策は遅れていた。薬剤師が早くから乗り出していたものの、医師や看護師等には、ほとんど浸透していなかった。
実際、日本病院薬剤師会が汚染状況を調査した報告によると、参加した全国6病院の全ての施設で抗癌剤に汚染されていることが判明している。また、ほとんどの職員に被曝が確認され、抗癌剤の調製に関与していなかった職員も大量に被曝していることが分かった。
わが国では、汚染リスクの高いアンプル製品として抗癌剤が供給されている。先発品の再評価結果が公表されておらず、後発品を開発できないためだ。1995年に再評価指定を受け、結果が公表されていないフルオロウラシル、デカフール、ドキシフルリジン、メトトレキサート、シタラビン等、未だ多くの抗癌剤が古いアンプル製品のまま供給されている。
こうした状況を受け、抗癌剤を扱い慣れていない病院や在宅まで幅広い曝露対策が不可欠と判断。医師、薬剤師、看護師の多職種が結集し、抗癌剤曝露対策の重要性を啓発するための協議会を立ち上げ、本格的な活動を始めた。
垣添理事長は、「医療現場にも抗癌剤曝露対策の重要性を認識してもらい、避けられる健康被害を防いでいきたい」と狙いを語る。5月29日には、厚生労働省から関係団体に対し、抗癌剤等の曝露防止対策の周知を求める通知が発出され、病院管理者に対策を促す格好となった。
今後、同協議会では、医療従事者の教育研修を進めると共に、抗癌剤汚染に関する調査、研究等を実施することでエビデンスを蓄積し、安全な曝露対策を推進していきたい考えだ。ホームページを通じて会員を募集し、今年度に200人の会員数を目指す。