厚生労働省は25日、臨床研究のあり方に関する論点整理案を「臨床研究にかかる制度のあり方に関する検討会」に示した。法的強制力を持たない倫理指針と法規制のバランスを踏まえた上で、被験者保護や倫理審査委員会の位置づけを議論していく。検討会では、日本医学会や国立がん研究センター等からのヒアリングも行い、国際基準で臨床研究を実施する必要性が訴えられた。
この日、ヒアリングで国立がん研究センター早期・探索臨床研究センターの大津敦氏は、先進国の中で研究者主導臨床試験を法律、ガイドラインでICH‐GCP準拠としていないのは日本のみと指摘。研究の質の保証について、法制化してICH‐GCP準拠とすると共に、被験者保護に関しても、全ての臨床試験をカバーする法制化をする方向性を提言した。
一方、埼玉医科大学総合診療科の宮川義隆氏は、欧州での臨床試験規制が失敗に終わったと指摘。研究者主導臨床試験にはICH‐GCPではなく、リスク別の規制が望ましいとした。
論点整理案では、倫理指針と法規制のバランスのあり方、法制化の実効性を担保すべき事項や臨床研究の範囲等が示され、被験者保護の考え方やIRBの位置づけが挙げられた。
楠岡英雄委員(国立病院機構大阪医療センター)は、「被験者保護の考え方の根本部分はヘルシンキ宣言にあるが、具体的にどうするかは書かれていない。ヘルシンキ宣言をベースに被験者保護を手順化する形でGCPのようなものを作っていく方向になるのではないか」との認識を示した。
武藤香織委員(東京大学医科学研究所教授)は「被験者保護は当然で、臨床研究は、被験者に主体的に協力してもらわなければ成り立たない」と強調。被験者が置き去りにされることに懸念を表明し、「臨床研究デザインに被験者の意見を入れるなど、主体的に被験者が関与することを考えてもいい」と提言した。