医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > プレミアム > 九州保健福祉大学、富高薬局、利用者の約7%に受診勧奨―薬局での即時検査の効果を実証

九州保健福祉大学、富高薬局、利用者の約7%に受診勧奨―薬局での即時検査の効果を実証

読了時間:約 2分35秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2014年06月26日 PM06:00

、富高薬局などの研究グループは科学研究費の助成を受け、薬局で実施する即時検査の有用性を調べる臨床研究を2012年9月から実施している。地域住民らを対象に薬局内で週1回、骨密度、HbA1c、血糖、血清脂質など生活習慣病に関連する検査を無料で測定。検査値が正常範囲から逸脱しているとして、利用者の約7%に受診を勧奨した。治療中の患者に対しては検査を機会にコミュニケーションが深まり、服薬意義の理解促進や生活習慣の改善につながる効果もあったという。

週1回、薬局内のブースで各種検査を実施している

検査は、毎週金曜日の午後2時から午後5時まで、日向市にある富高薬局A店内にブースを設置し実施。九州保健福祉大薬学部准教授で薬剤師の河内明夫氏と、同薬局の薬剤師1~2人が対応している。指先穿刺による自己採血などを活用し、骨粗鬆症、糖尿病、脂質異常症、高血圧の各種検査が実施可能だ。

初回時にまず同意を取得。その上で▽既往歴▽手術歴▽骨折歴▽家族歴▽アレルギー歴▽輸血歴▽禁忌薬▽通院状況▽服用中の薬▽かかりつけ薬局▽アルコールやたばこなどの生活習慣▽食事習慣――などを聞き取って個人調査票に記入する。

通常、初回時には全項目の検査を実施し、2回目以降は状況に応じて項目を選択する。血糖や脂質などの検査結果は約5分で判明し、検査値をもとに利用者と対話する。受付から検査、対話まで初回は1人当たり計20~30分、2回目以降は5~10分を費やすという。

開始当初、週に数人程度だった検査希望者は、現在は約10人に増加した。当初は富高薬局A店に来局する患者が中心だったが、口コミによって周囲の住民に広がった。

13年8月までの累積利用者143人への介入状況を解析したところ、基準範囲からの検査値の逸脱は全体の1~2割あり、河内氏や富高薬局A店の薬剤師は、未治療だった10人に受診勧奨を行った。このほか5人の利用者については、異常値が継続するかどうか、その経過を観察した。

また、46人に対しては、服薬意義の理解向上や生活習慣の改善につながる働きかけを行った。

薬の効果を検査値で確認した上で継続的な服薬を促し、自己判断で服薬を中止している患者には服薬の再開を提案。運動の実施や食生活の適正化も促した。このように検査を受けた利用者の42・7%に何らかの介入を行った。

「患者さんはこれまでも糖尿病教室などで説明を受けてきたが、実践にはつながっていなかった。薬局でこと細かく生活指導や食事指導を行うわけではないが、背中を一押しすることによって動機づけができた。糖尿病教室などで学んだことを、患者さんが自ら実践するようになった」と河内氏は話す。

薬局での即時検査は、受診勧奨だけでなく「コミュニケーションを深めるツールとしても有用」と河内氏は強調する。検査を機会に、運動や食事の習慣などを詳しく聞き、それらの情報や検査値を把握した上で薬剤師は、個々の利用者に応じた情報を提供できる。それが患者の意識や行動の変化につながる場合があるという。

河内氏らは、野村総合研究所などが開発した生活習慣病発症予測システム「健康みらい予報」も同時に活用している。これは、年齢や性別、検査値などを入力すると、同年齢同世代に比べ心血管疾患などの発症リスクがどの程度高いかという情報を表示するもの。▽治療目標値に到達すると発症リスクをどれだけ低くできるのか▽服薬によってリスクの上昇をどれだけ抑制できているのか――などを具体的な数値で示すことによって、動機づけに役立つという。

河内氏
  • 河内氏
全ての写真をご覧になるにはQLMIDにログインする必要があります。

河内氏

  • 河内氏

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 プレミアム 行政・経営

  • 【PMDA】コロナ薬投与で注意喚起-妊娠可能性ある女性に
  • 【薬価部会】不採算品再算定、対象絞り込みを-25年度中間年改定
  • 【厚労省調査】敷地内薬局、専門連携の1割-処方箋集中率は93.1%
  • 【臨試協調査】外資が日本を第I相拠点に-国内実施のメリット認識か
  • 【NPhA】半数以上が後発品を選択-長期品選定療養に一定効果